卯 ―ウサギ―
干支シリーズ第四弾、今回はウサギである。
まず始めに述べておくと、ペットのウサギ、別名カイウサギはヨーロッパ原産のアナウサギが家畜化されたもので、野外で見られるノウサギ――近年ではニホンノウサギの名が使われる――とは別種である。
小学生の頃、学校で飼っていた記憶のある方も少なくないだろう。一般の方にとっては、十二支の中では
日本には、本州・四国・九州と一部の島に分布するニホンノウサギ(四つの亜種に分けられることもある)のほかに、北海道のエゾユキウサギ、奄美大島・徳之島のアマミノクロウサギのウサギ科三種に加え、北海道の高山帯に生息するナキウサギ科のエゾナキウサギが分布している。
筆者は専門外のため哺乳類調査――実際には両生類・
さすがに実物を見ることは少ない。昆虫類調査で、網で草むらをバサバサ
それでも、そこに動物がいたという痕跡は残っている。それをフィールドサインと呼び、実物が確認困難な哺乳類調査では、調査のための重要な目印となっている。
ウサギの場合、糞や足跡、そして草を食べた跡。
足跡は、湿地や川原の砂地、もしくは畑のような柔らかい土の上などでない限り、なかなかはっきりと残らない。
雨のやんだ後や雪が積もった時は、足跡が残りやすくなるチャンスであるが、逆にそれまであった足跡が消えてしまうこともある。
一番見つけやすいのは、やはり糞だろうか。
◆
環境調査員の仕事を紹介する本エッセイの本筋からは外れてしまうが、最近では意外なところで『ウサギ』を見かけることが多くなった。
なろう系をはじめとするネット由来のラノベ――このカクヨムももちろん含む――の中である。
異世界ものの序盤に登場する雑魚モンスターといえば、スライムやゴブリンを思い出す方も少なくないだろう。
しかしスライムは、ある有名なコンピューターゲームの世界でこそ最序盤の雑魚として知られるものの、最近では主人公の転生体か召喚獣、仲間モンスターなどとして、武器による攻撃が通用しない強者として書かれることも多くなった。
一方ゴブリンは、また別の有名コンピューターRPGで時として、最初に登場する敵となったこともある。西洋風ファンタジーにおける人型の敵モンスターとしては、オークやオーガー、トロールなどが有名どころだが、ゴブリンはやはり最弱として認識されることも多かった。
ところが最近のラノベでは、知能も高く、徒党を組んで人を襲う。駆け出し冒険者では命を奪われることもあり、女性たちは十八禁な目に合わされる危険な存在に描かれることも多くなった。
それに替わって、ネットの異世界小説でよく序盤モンスターとされるのが、角の生えたウサギである。なぜ角が生えているかは不明であるが、たぶんただのウサギなら動物虐待ととられかねない、という判断かもしれない。
それから、前出の『竜の探索』を意味する名を持つゲームにも、アルミラージの名で序盤モンスターとして角ウサギが登場している作品がある。名前の由来は、伝説に登場する角の生えたウサギのような怪物らしい。
それに
ちなみに他のコミック化されたラノベに登場するのは、ユニコーンのように額に骨質の角を持つものだが、これだと角で攻撃した際に頭骨や脳にダメージを食らいそうなので、拙作に登場するものは実在するサイのような鼻先に角質の角を持つタイプにしてみた。
◆
さて、ウサギの名を持つ生き物だが、なぜかかなり少ない。
ぱっと思い出せるのは、大きな耳を持つコウモリの仲間、ニホンウサギコウモリくらいだ。筆者は実物は見たことはないが、会社員時代に同社の動物調査員が撮った写真を見せてもらったことはある。
昆虫も、角や突起をウシの角に見立てて命名されたものは結構いるのに、ウサギの耳に見立てたものはいないらしい。
仕事のデータ整理に使うデータベースで検索をかけてみたが、出てきたのは
元はといえばこの干支シリーズ、年賀状のネタとするためのものだったので、もちろんこれは不適。
他にウサギに関する生き物はというと、まったく心当たりがないわけではないが、あんまりいいものではない。
釣りをしたことのある人ならば、ワカサギ釣りの餌としてラビットというものを見たり聞いたりしたことがあるかもしれない。
これがウサギの何かというと、『ウサギの糞を餌に育てたハエの幼虫』である。
来年(2023年)の年賀状?
普通にウサギの絵を描けばいい気がする。
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