【悲報】買ったばかりのレインコートが早速破れた
梅雨入り宣言が行われた途端に、晴れの日が続く。
逆に、梅雨明け直後から、雨の日が続く。
これらはいわゆる、梅雨あるあるというやつかもしれない。
2021年の初夏は、中国・四国・九州地方が5月中旬から梅雨入りして、屋外の現場は大混乱に
それでも現場は複数あるし、調査員の数にも限りがあるので、天気が回復するまで延期、というわけにもなかなかいかない。
その結果、レインコートを着て雨の中採集調査をする日も多くなった。
採れる虫はかなり減るし、正直寒くて嫌なのだが、仕事は仕事である。
◆
ただ、雨は仕方ないけれど、雷はダメだ。
雨にいくら打たれても、風邪をひく程度………今の御時世だと、ホテルから追放される羽目になるかもしれないが……それより雷に打たれたら命が危ない。
昆虫類調査中はほぼ常に
捕虫網、つまり虫取り網の柄は木か竹の棒というのが一般的なイメージかと思う。だが、プロ仕様のものは柄がアルミかカーボン繊維でできている。とっても電気を通しやすい。
これはもう、
避雷針は雷を避けると書くが、それがある場所を雷が避けてくれるわけではない。
そこに雷が落ちることにより、その周りの家などが雷による被害を
ゲームなんかだと、雷属性は水生モンスターに有効という設定が多いが、現実の人間が雷を受けたらみずタイプじゃなくてもこうかばつぐんどころの騒ぎじゃないので、遠くで雷の音が聞こえたり、稲光が見えたりしたら調査を中断して車に戻ることになる。
実際2021年も、夏から秋にかけて3度ほど車で待機することになった。
◆
前回も書いたが、レインコートは現場をウロウロしていると結構ボロボロになりやすい。
草むらや藪の中に入ったりするので、すぐに目に見えない細かい傷が多くつくのである。
なお、いいレインコートの中には雨の水滴は通さないが、蒸発して水蒸気となった汗は通すという、蒸れにくい高級品も存在する。しかし、高価な上に草むらや藪に突っ込むような使い方はやっぱり想定されていない。
だから、消耗品のような使い方は当然できない。
というわけで、現場では安物のレインコートを愛用……いや、愛用とは言えないか、これは……安物を常用している。
雨はもちろん水蒸気も通さないので、暑い時期には中が汗だくになるが。
で、使っているうちに細かい傷が付き、水蒸気、さらには雨も通すようになる。
最初は蒸れて暑いが、しばらく使っていると濡れて冷たくなるのである。
仕方がないので、レインコートは結構頻繁に買い替えることになる。
◆
その日も雨の現場で、薄緑の作業服の上から買ったばかりの紺のレインコートを着て採集調査を行っていた。
調査終了時間が近づき、車へ戻る途中。来た道と別の道から帰ろうとしたら、かなり遠回りで時間が掛かることが分かった。
でも、途中にある
下請け業者の人との合流が遅くなる可能性があったため、迷わず藪に突っ込んだ。
しばらく悪戦苦闘したが、なんとか藪は抜けた。
……あれ……?
妙だな。右足だけ色が違う。
藪の中で引っ掛けて、いつの間にか太ももの真ん中あたりからレインコートのズボンがなくなっていた。
仕方がないので、ズボンをさらに濡らしながら車までとぼとぼと歩く。
まあ、その下の作業ズボンまで裂けなくてよかった、ということにしておこう。
◆
とはいえ、確かに作業ズボンは丈夫ではあるが、けっして無敵というわけでもない。
昔、回り道が面倒だったのでノイバラの群落を突っ切ったら、縫い糸が切れたようで、作業ズボンの真横の縫い目がほどけ、右足の外側が縦に割れた。
それはあたかも、チャイナドレスのスリットのごとく。
幸い下着までは見えていなかったが、おっさんの生足など見ても見せてもどうしようもないので、処置を急がねばならない。
予備のズボンが車になかったので――確か宿にはあったはず――ひとまずガムテープで応急処置をし、コンビニで安全ピンを買って切れ目をふさいでおいた。
◆
まあ、長年仕事をしていれば、色々な事があるものだ。
レインコートは消耗品です。
作業服も消耗品です。
我々の業界では消耗品です。
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