梅雨の日の2021
まず結論から言おう。
五月中旬の梅雨入りは、まったく予想外であった。
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今年2021年はコロナ禍のせいだけではなく、春先から昆虫のほうもなんとなく様子がおかしかった。
まあ、ある程度移動して自分の研究用の昆虫採集というのもできなかったので、子供を保育園に送った後、仕事場に行く途中で公園などをのぞいて見かけた昆虫などを記録する程度であった。
それでも、普段はゴールデンウィーク明けから徐々に見られる数が増えてくるアゲハチョウの仲間が、今年は4月中旬からあちこちで見かけるようになり驚いていた。
個人的にはあまり本格的な採集調査などできなかったが、もし山林である程度採集ができていたら、興味深いデータが得られることもあったのだろうか。
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以前も書いたと思うが、この手の環境調査はだいたい一年を通しての業務で、各季節に一度ずつ調査が行われることが多い。
ただ、昆虫の場合は通常春、夏、秋の3回調査で、目的地の環境や分布していそうな重要種に応じて、冬季、早春季、初夏季などの調査が追加されることがある。
で、雨で昆虫類の確認しづらい梅雨の時期を挟んで、梅雨が始まる前に春季調査、梅雨が終わった後に夏季調査という流れが普通なのだが……。
繰り返すが、五月中旬に梅雨入りは予想外だった。
とはいえ、かなり前から設定されていた五月後半の春季調査日程は、そう簡単には変えられない。
というより、後ろにずらしたところで天候が回復するという保証はない。すでに梅雨入りしてしまっているだけに。
だから、雨の中レインコートを
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さて、予定通り川の昆虫調査に来たものの、川は完全に増水してしまっている。
一応書いておくと、雨はよほどひどくない限り調査は可能である。
とはいえ捕れる虫の種類は限られるし、なにより調査員のテンションが大きく下がる。
それでも調査をしなければならない時はある。レインコートを着て。
レインコートというと、膝ぐらいまで伸びた雨ガッパを想像される方も多いだろうが、調査用には上半身のジャケット型と下半身のズボン型に分かれたものを使用する。
これはもちろん、普通に着ていれば傘なしでも十分雨の中歩き回れるものではあるが……いかんせん草むらの中を歩き回ることは想定していない。
意外に鋭いイネ科の葉に擦られ、時には行く手を阻むノイバラの群落に突入する。
そうして、レインコートにはごく小さいか目に見えない傷が刻まれてゆき……。
そして気が付けばレインコートの下に来ていたいつもの作業着はずぶ濡れである。
夕方になり、ようやく作業は終わった。
チョウやトンボ、ハチなど、よく飛ぶ虫は散々であったが、甲虫など木の葉の上に止まっている種はそれなりに捕れた。
仕事終了後ホテルに戻ると、後片付けもそこそこにユニットバスに駆け込んだ。
すでに五月中旬のため、下着まで濡れてもそれほど寒くはない。
それでも、このコロナ禍のご時世に万一熱など出したら大変なことになる。
シャワーを浴びながらバスタブにお湯をため、そのまま浸かる。
何とか体は温まったが、後始末はこれで終わりではない。
財布の中のお
領収書も処置が早かったのが幸いしたか、使用に耐えられそうである。
問題は、色移りして真っ青に染まった保険証。
どうしようかな、これ。
とりあえず、今度内科に言ったら聞いてみよう。
◆
さて、例年とは違う今年の梅雨は、いったいどんな形で終わりを迎えるのだろうか。
例年通り約一か月の間梅雨が続いて六月後半ぐらいに梅雨明けとなるのだろうか。
それとも、例年通り七月半ばごろに梅雨が終わるのだろうか。
梅雨が延々続くのも困りものだが、梅雨が早く開けると梅雨前線を押し上げて太平洋高気圧がやってくる。あんまり夏が早く来られても、やっぱり困るのである。
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