We 一蹴 you a merry christmas

 クリスマスが今年もやってくる。


 とはいえ、クリスマスは祭日でも祝日でもないので、土日と重ならない限りはただの平日、仕事は普段通りである。残業もいつも通りある。時には土日と重なってもやっぱり仕事。


 まだ会社員だったころ、一度だけクリスマスというのに現場に狩りだされた事があった。

 そのときは昆虫調査ではなかった。まあ、冬の昆虫調査は基本的に少ない。ないわけではないが。

 たしか、他の部署の手伝いで道路関係の騒音振動調査に駆り出されたのだった。


 他の日は雨だとか風が強すぎるとか、契約上今年中に実施しないといけないとか、先方の仕事納め前に速報を出さないといけないとか、そんなこんながあって万障お繰り合わせの上クリスマスに実施となったらしい。


 社員よりもアルバイトを雇った方が安くつくのではないかという意見もあるが、時期が時期なので人が集まらなかったようである。


 幸いにもその時には、仕事とクリスマスとどっちが大事なの、とか言ってくれる人もいなかったので、特に問題もなく現場に行った。まあいたとしても、今日は休みますというわけにはなかなかいかないけれども。


 外での調査は寒かったけど、クリスマスにはまったく関係のないなんの変哲もない現場であった。


    ◆


 九月いっぱいは忙しいけど、十月になれば余裕はできる。

 十月いっぱいは忙しいけど、十一月になれば余裕はできる。

 十一月いっぱいは忙しいけど、十二月になれば余裕はできる。


 そんなことを言っているうちに、気が付けば今年も十二月下旬である。七月か八月ぐらいからずっとそんなことを言っていた。

 春から初夏にかけては、今年は昆虫の仕事が少ないと言っていたのに、気が付けば年末まで締切がいっぱいである。


 今月は師走。師ではないけど、走らないといけない。環境調査員に限らないと思うが、年末が近いと仕事も多い。


 不思議なことに、時間が仕事で埋まり切ってしまうと、追加の連絡がほとんど来なくなる。現場の日程調整は別だが。

 逆に先の仕事が片付くと、待っていたかのように別の会社から仕事の連絡がきたりする。スケジュールを把握しているわけでもないだろうに。

 ある年の事、毎日毎日仕事ばかりでも嫌なので、数日仕事を前倒しにして頑張った。三日ほど余裕が生じ、これでゆっくりできる。そう思ってお茶を飲みに行ったとたん、携帯が鳴った。なんやかんやあって、今作ったばかりの三日分の余裕が過不足なく消えた。あのときは一体何事かと思った。


 まあ、仕事出す方だって、クリスマスは関係ないだろう。


 しかし、ここ数年はまた別だ。今年のクリスマスは平日だけど、子供たちが家で待っている。

 後はまた、26日に何とかしよう。


 とはいえ、十二月いっぱいは忙しいけど、一月になれば余裕はできる……はず。

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