第五話 勉強会

今日は桜の家で勉強会をしている。


桜の部屋で丸い机にそれぞれの勉強道具を広げ教えあう。

私と亜紀は家から持ってきたテキストの問題を解いていたのだが......


「ここだけは合ってるけど、それ以外全部間違ってるってどういうこと?馬鹿なの??」


「わぁ~ん!!だって意味分かんないんだもん!」


桜の解き終わった問題を採点し終えた麗華は はぁっと息をつき呆れた声音で厳しめの言葉を言う。


「私、説明下手なのかな?」


「いいえ、麗華の説明はとても上手だと思うわ。」


「ありがとう、紅葉。」


麗華が悲しそうに目を伏せるので、私はすかさずフォローする。

でも、これは本音だ....

だって、麗華が人に教えるのが上手なのは本当だ。

桜も申し訳なさそうにしている。


なんとなく、気まずい空気が流れる中...


「皆さん!!昨日お姉様とお菓子やさんで今日のためにクッキーを買ってきたんですよ!」


亜紀の明るい声が響き渡る。

亜紀はカバンを膝に置き、中から昨日買ったクッキーを出した。

気まずい空気が嘘のように晴れ、和やかな空気が戻ってきた。

桜も嬉しそうにクッキーを凝視している......


「食べましょう!」


亜紀はクッキーの封を開けると机の真ん中に置き微笑んだ。



「おいしい~!!」


最初にクッキーに手を伸ばしたのは桜。

桜はクッキーを一口食べると 幸せそうに笑った。


「桜は本当に美味しそうに食べるわね?」


「だって、おいしいものを食べると幸せになれるじゃん!」


「わかります!!やっぱり、おいしいものは良いですよね~!!」


こんなに喜んでくれるのなら、私も亜紀も一時間お店に並んだ甲斐があった。

麗華も私に微笑んでくれたから、きっと喜んでくれたのだろう。






「あっ、麗華の家行きたいなー!」


クッキーを食べ談笑していると桜が突然、麗華に向かって言った。


「良いけど......勉強会って忘れてない?」


麗華はそれに苦笑し言う。

桜は本当に勉強会のことを忘れていたのかビックリしたような表情をしてうなだれた。


「はぁ~、いいよ。今行く?」


「い、良いの?!」


「良いんですか?!」


弾かれたように麗華を見てパァァァと目を輝かせる桜。きっと、今はダメ!!とか言われると思ってたんだろうなぁ~

そして、私の隣に座っていたはずの亜紀はいつの間にか立っていて、こちらもまた目を輝かせて叫んでいた。よっぽど麗華の家に行けるのが嬉しかったのねぇ~


「二人とも......私の家、なぁんもないけど?」


「「行く!!!」」


桜と亜紀のハモりを聞いて麗華は頷き、私の方を向く。


「私も、ぜひ行かせてほしいわ。」


なので、にっこりと麗華に微笑み同意する。


「そっか、じゃあ行こう。」


私達は勉強会を中断し、麗華の家にお邪魔することとなった......







「わぁぁ~~~!!」


亜紀の、嬉しそうな感動した声が麗華の部屋に響く。

私も見たことない固いケース??に手を触れる。


「ああ、懐かしい!!昔麗華とやってたゲーム!!!」


私の持っているケースを見て桜が笑いながら“ゲーム”と言った。


「ゲーム...?」


「ん?ゲーム、やったことないの?」


「ゲームって....娯楽?」


「そうだよ♪昔はねぇ~麗華と一緒にいろんなゲームをプレイしてたんだぁ~~」


私に楽しそうに話してくれる桜。

そんなに面白いのかしら?


ゲーム......面白そう......



「やってみる?」


麗華は私の顔を覗きこみ笑った。

桜もそれに やろうよ!と楽しげで......

亜紀も興味津々だ。


「フフ。じゃあ、やらせてくれる?」


「勿論。」


麗華は私の持つケース......いいえ、ゲームを取って床に座る。ケースを開け中身を機械にセットした。

桜も床に座り、それを真似して亜紀と私も床に座った。




予想外に、ゲームというのは楽しい。

前世でこんな楽しい娯楽はなかったし、とても新鮮だった。

現世の両親は機械に疎くゲームは買ったこともなかったし、やったこともない。

今日がはじめてのゲーム。

麗華と桜は一からゲームについて教えてくれた。

本当に優しい......

おかげで、とても上達したわ。


「ええ?!紅葉強すぎ!!本当に今日が初めて?!!」


「上達するのがここまで早いとは......さすが学年1の天才美少女..........」


「天才美少女......?」


「そうです!!お姉様は天才美少女なんです!!!」


桜...私、本当に今日が初めてなのよ。

麗華と亜紀は無視しましょう。

天才美少女とは一体何......???


「お姉様、操作方法が分かるとゲームって楽しいですね!」


「ええ。本当に面白いわ! 」


私は、亜紀が笑ってくれているのが嬉しい。

ゲーム......やって良かったわ。

亜紀の笑っている姿を見ると私も幸せな気分になってくる。











ゲームをしていて、

私は、麗華の部屋のゲーム棚の......

ある一点に目がいった。


私は......それを見て震えが止まらなかった。

血の気が引いていくのが分かる。


桜と麗華がそんな私の様子に動揺して、

話しかけたりしてくれているが......

反応できない。


亜紀も急に変わった私の様子に心配そうに声をかけるが......私の視線をたどって、固まった。


そして、亜紀はガタガタと震え泣き出した。


その異常な私達の姿に、麗華と桜は後ずさり......

視線をたどる。


そこには、一つのケース......ゲームがあった。

題名は『救国のプリンセス』

そのゲームには......

ノア・スチュアードとステラ・スチュアードの姿、そして ノアとステラを死に追いやったアンナとアルドの姿が大きく描かれていたのだった......





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

濡れ衣の悪役令嬢は現世で妹を溺愛する アルパカ・パカ @arupakasa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ