第四話 姉妹の幸せ

(紅葉目線)

まさか亜紀も転生者だったなんて...

自分が転生したと知った時より驚いた。

あの日、亜紀がステラの記憶を持つ転生者だと知った日...

あの時は話しが急展開すぎて驚く間もなかった。

だから後々冷静になって考えた時、実は凄いことだったのだと分かり、『奇跡』だと感動した。


あれから1ヶ月。

亜紀はあの暗い表情が嘘のようによく笑うようになった。

出張から帰ってきた両親が亜紀の姿を見て感動の涙を流していたのを今でも覚えている。

元の明るさを取り戻した亜紀は、信頼のおける友人も出来たようだった。

私はあの日から現世での生活がより楽しくなったと感じている。




お昼。亜紀と私、そして桜と麗華と共に校舎裏にある人気のないベンチに座って昼食をとる。

とても静かで、私のお気に入りの場所だ...


「お姉様!今日は放課後 新しく出来たお菓子屋さんに行きませんか?」


「そうね。行きましょう!」


前世ではなかなか行けなかったような場所も現世なら行くことができる。

それに、亜紀とならどこに行っても楽しい。

微笑み合う私たちを見て麗華は言う。


「ちょっと二人とも二週間後テストって忘れてないよね!?」


どうやら、亜紀には今の発言は聞こえていなかったらしい。

やったぁ!放課後が楽しみですね!と私に満面の笑みを向けてくれる。

そんな亜紀の頭を優しく撫でながら、

私は麗華の方を見て言う...


「忘れてないわよ?私、テストって簡単に解ける自信しかないのよ。」と。


「ああ...そっか、あんたいつもテスト学年1位とってるもんね......次こそは 私が 学年1位の座を奪ってやるんだから!覚悟しててよ?」


「わぁ!お姉様学年1位だったんですか!?凄い!」


麗華が挑発的な笑みを向けてくるのに対して、

亜紀は目を輝かせて尊敬の眼差しを送ってくる。


「そういえば、亜紀は前回のテスト結果はどうだったの?」


麗華がふとそんなことをきく。


「えへへ...私、学年2位でだったんです。5点差で...」


しょんぼりと残念そうにうつむく亜紀。


「そうか...2位って結構辛いよね。しかも5点差って...きいて悪かったよ...」


そんな悔しそうな亜紀の表情を見て、自分にも思い当たる節があるのか麗華は苦笑いを浮かべる。

あら...私、一位を取ってはダメだったかしら?

二人とも悔しそうね...

しばらくの沈黙の後、耐えられないというように沈黙を破った者がいた。


「三人ともひどいよ!私がテストの成績悪いの知ってるでしょ?!私会話に入れないじゃん!!」


と、涙目で私たちに訴える桜だ。


「あ...ごめんなさい。」


「桜先輩!ご、ごめんなさい!」


私と亜紀は急いで謝るが、麗華は言う。


「そうねぇ?だってどこかの誰かさんは今までテスト前にさんざん遊んでおいて勉強すらしてこなかったんだからテストで点数を取れないのは当たり前じゃない?日頃から勉強してるならまだしも...」


その発言に桜はもっと泣きそうに顔を歪める。

二人は幼なじみで仲が良いのだが、それゆえに麗華は桜に対して結構辛辣なことを言うのだ。


「あんたが勉強を教えてくれというならいくらでも教えるのに...いつも遊んでばっかり。」


だが、麗華も辛辣なことを言った後は優しい発言が多い。というか、『ツンデレ』という感じだ。


「ほんと?!」


麗華の発言に嬉しそうにする桜は、さっき泣きそうだったとは思えないほど明るい。


「じゃあ、勉強会しようよ!!」


桜が、良いことを思い付いた!というように大声で叫ぶ。


「わ、私も、 勉強会 したいです!」


そう言って興奮気味に桜に同意する亜紀は、以前から『勉強会』というものをしたかったようだった。今も頬を赤らめて嬉しそうにしている。


「麗華、勉強会とは何なのか教えてくださらない?」


「ああ...勉強会っていうのは皆で集まって勉強をしたり、互いに教え合って学びを深めていくものなの。ちょうどテストが近いから、今の時期にやるのは良いかもね。」


へぇ...面白そう。

私も勉強会というものが気になってきた。


「そうと決まれば、善は急げ!明日にでもやりますか!! あっ、集まるのは私の家で良いよ!」


桜はそう言って、皆明日って予定ないよね?!ときいてくるので、私も亜紀も頷き返す。


「言っとくけど、勉強するんであって遊ぶんじゃないからね?」


「分かってるよぉ~」


すかさず桜にツッコミを入れる麗華。

そんな二人の会話に耳を傾けながら、

隣にいる亜紀に


「良かったわね。」


と言う。

亜紀は目を輝かせて

「はいっ!!」

なんて言うものだから、可愛いくてたまらない。



私たちの家から桜の家はそう遠くなく、私は一度行ったことがあるので場所は分かる。

亜紀は桜の家に行くのは初めてで緊張すると言っている...

ちなみに、桜と麗華の家は隣どうしなので麗華の家にも少しお邪魔させてもらえることになった。






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