満天に無数の星
「にょろ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~。」
それは奇妙は悲鳴であった。
ラド・シエナが空を見上げると、そこには巨大な白い翼を持つ者が見えた...ような気がした。
気がした......のだが、気のせいだろうか、落ちてきているのは真っ白な蛇であるようだった。
「助けてにょろ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~。」
ラド・シエナは、蛇が地面に叩きつけられる間一髪のところで受け止めた。蛇は落下のショックで気絶してしまっていた。
蛇のお腹は青白く光っていたが、もごもご言いながら ' ホウセイの木の実 ' を吐き出した。その実はコロコロと転がり、森の中のどこかへ消えていった。
蛇は気絶から目を覚まし、
「死ぬにょろ~~~死ぬにょろ~~~。」と言っていたが、しばらくしてやっと助けられたことに気が付いた。
「ラド殿、ラド殿、助けてくれたのにょろか、しかし、ラド殿とこのように再会できるとはこれは『神』の僥倖にょろかねぇ。」
「蛇殿。」とイチジ大僧正が呼び掛けた。
「イチジ大僧正もいらしたにょろか。」
「先程までナダ殿もいらっしゃったのですが...。どこかへ......。」
「おお、我が弟ナダもいたにょろか、久しぶりに会いたいところであったが。」
「蛇殿はなぜ空から落ちてきたので?」
「空から落ちてきた理由はわからぬにょろが、さっきまで太古の昔にいたにょろ。' ナダの力 ' を使う者がいたにょろ。」
「件の太古の時代の ' ナダの力 ' のことでございますか?あれはいったい?」
「ダメにょろ。この件はおそらく『神』の禁忌に触れるにょろね。話すことはできないにょろよ。」
それは、東京の雑居ビルで灘よう子が異空間を創り出した件のことであるが......。
"あの異空間に満天に無数の星を残しておいたにょろ。異空間は消えたはずだが、痕跡は残しておいたにょろ。弟なら再現できるはずにょろね。"
"我が弟はあの星々を見てくれたにょろかねぇ。おそらくあいつが見たかった光景にょろよ。"
この遥か未来、砂漠となったその場所で、遺跡と化したその雑居ビルにて確かにナダはその光景を見た。
その空間は一面の砂漠であった。砂漠は夜であり、満点に無数の星が見えた。
≪登場人物紹介≫
・シロ ・・・ 本当の名をゲンカイ・ナダという。
・クロ ・・・ 本当の名をクロ・ト・ジュノーという。ジュノー王国の王子。
・アオ ・・・ 本当の名をアポトーシス・オルガという。〈死神〉と呼ばれることがある。
・男 ・・・ 謎の男。名前はラド・シエナ。
・蛇 ・・・ 謎の蛇。巨大な白い翼を持つ者(?)。
・灘よう子 ・・・ 東京で探偵をやっている。
・鴨木紗栄子 ・・・ 灘よう子に仕事を依頼する。
・鴨木邦正 ・・・ 鴨木紗栄子の伯父。植物学者。
・黒戸樹 ・・・ 鴨木紗栄子の夫だった人物。
・蒼井瑠香 ・・・ 医者。
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