ゲンカイジマ石棺
大僧正のところへ向かう途中、ジュウイチジは ' ホウセイの木 ' について話し始めた。
「平行世界......平行世界かしら?......では ' ホウセイの木 ' は ' ホウ精の木 ' ... セイを精霊の精と書くようですね。」
「精霊の木...の一種ではありますが......。ご存知かと思いますが、いずれにせよこの木は植物型生命兵器です。しかし、その ' ホウセイ ' というのは人の名前だという説もあります。」とジュウイチジは言った。
「ジュノー王家の王子が、 ' ホウセイの木 ' の花粉症になったとか......だとかいうお話しでございまして、伐採するよう命じられております。」野良のカモノハシが言った。
「しかし、この辺りでは伐採しても伐採しても新しい芽を出すのです。すごい繁殖力で。」
「この辺り......ゲンカイジマと呼ばれる地域が、ジュノー王家発祥の地であることと関係があるかもしれませんね。」
「ともかく伐採せよとのことでございますが、できぬなら 『 この地域を石棺で閉じ込めよ』 とのご命令を受けております。」とジュウイチジは続けた。
実際にその後、このゲンカイジマは石棺で閉じ込められ、シロは遺跡と化したその石棺の中を見てきたわけである。
「まったく、王子が花粉症だってだけでそこまでせにゃならんとはね。」野良のカモノハシはぼやいた。
「え、ええ、花粉症...本当に花粉症かどうか分かりませんが...」
「ジュウイチジというのか......あの医者のところにいた...カモノハシだよな?」ラド・シエナが聞いた。
「医者?お前病気なのか?」シロが言った。
「あ?ああ、まあ病気だが、、大人になるといろいろあるのだ。子供が口をはさむな。」
「俺は子供ではないぞ、こう見えていろいろ経験豊富なのだ!なんならお前より経験豊富だぞ!」
ラドは、やはり子供の相手はやめようと思った。
「医者...医者......あの方は医者というような者ではありませんが...むしろ正反対と申しますか......私はあの方へ ' ホウセイの木の花 ' をご用立てしておりましたが......王家の監視が厳しくなりまして。」
「もちろん、あの木の花や実はとても危険でございますので、規制が厳しくなることは必定でございましたが。」
「そうですね、とある病気の特効薬でもあったようでございますね。ともかく危険でございますので、ラド様を追って慌てて私もここへ舞い戻ってきたところでございます。」とジュウイチジは言った。
「とある病気ってなんだ?」シロはまた口をはさんだ。
「子供は黙ってろ。」ラドはややキレ気味に言った。
シロは、ほぼ全知と言うわりには質問の多い少年であるようであった。
≪登場人物紹介≫
・シロ ・・・ 本当の名をゲンカイ・ナダという。
・クロ ・・・ 本当の名をクロ・ト・ジュノーという。ジュノー王国の王子。
・アオ ・・・ 本当の名をアポトーシス・オルガという。〈死神〉と呼ばれることがある。
・男 ・・・ 謎の男。名前はラド・シエナ。
・女医 ・・・ 謎の医者(?)。
・灘よう子 ・・・ 東京で探偵をやっている。
・鴨木紗栄子 ・・・ 灘よう子に仕事を依頼する。
・鴨木邦正 ・・・ 鴨木紗栄子の伯父。植物学者。
・黒戸樹 ・・・ 鴨木紗栄子の夫だった人物。
・蒼井瑠香 ・・・ 医者。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます