ジュウイチジ 〈太ったカモノハシ〉
カモノハシの言うように、この辺りは穴がたくさんあった。
ラド・シエナという名の男は、"俺はこの穴のどれかに落ちたのだろう"と思った。ただ彼が元に居た世界では穴は一応ふさがれていて、ふさがれているせいでかえって ' 落とし穴 ' のようになってしまっていたのであるが。
森を抜けると、『森の向こうのバー』があった。
しかし、その建物の中も元の世界とは異なりバーではなくただの小屋になっていた。また、大僧正もいなくなっていた。
大僧正の代わりに、' やたらと太ったカモノハシ ' がいた。
野良カモノハシの二匹は、その ' やたらと太ったカモノハシ ' を見て、
「ああ、、ああ、、」とおかしな声を出して、なぜか頬を赤らめていた。
「ああ、、ああ、、ジュウイチジ様、ジュウイチジ様、、お美しい。」
カモノハシの美醜はよく分からないが、この二匹の様子からすると、そのジュウイチジというカモノハシは美しいらしかった。
ジュウイチジは、
「穴の埋め立ての作業、いつもすまぬな。私も時間があれば手伝うのだが。」と言った。
「と、とんでもございません。あのような作業は我々のようなシモジモの者が行えば良いのです。」
と野良カモノハシは言った。言ったが、その割に埋め立てられていないじゃないか、とラド・シエナは思った。
「それに、ナダ様とラド様...。」
「イチジの爺さんはいないのか?」とシロは聞いた。
「ええ。先程、ちょっと出掛けてしまいました。」
「そう言えば、昨晩、' 『ゲイカイ・ナダ』の声が聞こえた ' と大僧正は言っておられました。」
「ん?俺はさっきこの世界に来たばかりだぞ。爺さん、ボケたか?」
「いえ......、だいぶお酒に酔われていらっしゃったようですから......、何かの勘違いかもしれませんね。」ジュウイチジは言った。
「それはそうと、私はそちらのラド様を追いかけて来たのです...。」
ああ、このカモノハシはあの女医のところにいたカモノハシだ。
「ご無事で安心いたしました。' ホウセイの木の花 ' を手に入れたいのですね。' ホウセイの花 ' の咲く場所をご案内させて頂きます。イチジ様もそこにいらっしゃいます。」
とジュウイチジは言った。
≪登場人物紹介≫
・シロ ・・・ 本当の名をゲンカイ・ナダという。
・クロ ・・・ 本当の名をクロ・ト・ジュノーという。ジュノー王国の王子。
・アオ ・・・ 本当の名をアポトーシス・オルガという。〈死神〉と呼ばれることがある。
・男 ・・・ 謎の男。名前はラド・シエナ。
・女医 ・・・ 謎の医者(?)。
・灘よう子 ・・・ 東京で探偵をやっている。
・鴨木紗栄子 ・・・ 灘よう子に仕事を依頼する。
・鴨木邦正 ・・・ 鴨木紗栄子の伯父。植物学者。
・黒戸樹 ・・・ 鴨木紗栄子の夫だった人物。
・蒼井瑠香 ・・・ 医者。
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