石棺
「ああ、そうだ。お前らは何でこんな町にいるんだ?」シロはあらためて騎士達に聞いた。
「ジュノー王国の王の試練が、つつがなく進まれるか見届けに来ただけだ。西域の王が気にしている。」
「ジュノー王国?」シロはとぼけた。クロウはジュノーという言葉に若干反応したようだった。
「まあ良い。今はお前らに用はない。」
シロとクロウは薬草屋に向かうことにし、赤の騎士達は別の路地に消えていった。
***
薬草屋にたどり着くと、もう既にクロは薬草屋の少女が調合した薬を飲まされていたようだった。
薬の効果があったのかどうか分からないが、とりあえずくしゃみは止まっていた。
「ありがとう、でもどうしよう、僕お金持ってないよ。」クロは言った。
「何だお前、金も持たずに薬草屋に来たのか?」
「金ならおれが払うよ。」とクロウが言った。
「クロウ、少しはキレイになったな。まあいい、これくらいなら無料でいい。」と薬草屋の少女は言った。さらに、薬を小さな袋に入れクロに渡してくれた。
「花粉と言えば、石棺の中のホウセイの木が花を咲かせたらしい。僧侶がそう言っていた。」
石棺とはこの町の地下にある古代の遺跡であった。この町の地下には、まるまる古代コンクリートで覆われた空間があるのだ。
クロ達は少女に礼を言うと、薬草屋を後にした。
***
「おまえたち、今日はおれの家に泊まっていけよ。」とクロウはシロ達に言った。
おれの家と言うが正確にはカ・モギ博士の家である。もちろん、シロ達に断る理由などなかった。砂漠を旅して来た彼らには泊まれる家があることは大変ありがたいことであった。
そういうわけで、シロとクロはカ・モギ博士の家に行くことにしたが、カモノハシのニジュウヨジは、
「ワタクシは大僧正を探して、祈りの儀式の準備の手伝いをすることにいたします。」と言った。
「大僧正なら、たぶん、石棺の中だろうな。」
「そうですか。ありがとうございます。ではワタクシは石棺へと行ってみます。」とニジュウヨジは言った。
あらためて、そういうわけで、シロとクロはカ・モギ博士の家に行くことになった。
≪登場人物紹介≫
・シロ ・・・ 本当の名をゲンカイ・ナダという。
・クロ ・・・ 本当の名をクロ・ト・ジュノーという。ジュノー王国の王子。
・アオ ・・・ 本当の名をアポトーシス・オルガという。〈死神〉と呼ばれることがある。
・ニジュウヨジ ・・・ オアシスにいたカモノハシ。アオの能力により少女の姿になっている。
・クロウ ・・・ 門番の少年。
・灘よう子 ・・・ 東京で探偵をやっている。
・鴨木紗栄子 ・・・ 灘よう子に仕事を依頼する。
・鴨木邦正 ・・・ 鴨木紗栄子の伯父。植物学者。
・黒戸樹 ・・・ 鴨木紗栄子の夫だった人物。
・蒼井瑠香 ・・・ 医者。
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