王子のくしゃみ
町の中には石造りの質素な家がところ狭しと並んでいた。
「べーっくしょん。」とクロがくしゃみをした。
シロはそのくしゃみは無視して、カモノハシのニジュウヨジに、
「お前はこの町に何か用があるのか?」と聞いた。
「はい。ワタクシはクロ様の ' 王の試練 ' のお手伝いをすることになっております。」
「この町には大僧正がいるはずでございまして、大僧正とともに祈りを捧げることになります。」
「そうか。」シロはあまり興味がなさそうであった。
「俺は、たまたまこの王子様と出会っただけだ。砂漠の真ん中に置いていくのもなんだから、近くの町まで連れて行ってやろうと思っただけなんだ。だから、お前らとはここでお別れだ。」
「べーっくしょん。」とまた王子がくしゃみをした。
ニジュウヨジも、そのくしゃみは無視して、
「ワタクシ達はこの後、' 西域の王 ' に謁見し、できれば ' 西のドラゴン ' にもお会いしたいのでございます。できれば、せめて ' 西域の王 ' の居城までお付き合い頂けませぬでしょうか?」
「' 西域の王 ' に ' 西のドラゴン ' ?、あの龍はまだ生きているのか?」
「のはずなのです。これが ' 王の試練 ' であるならば、' 西のドラゴン ' はいるはずなのでございます。しかし、' 王の試練 ' を完了させるためにドラゴンに会うことは必ずしも必須では無いのでございますが...。」
「べーっくしょん。」とまた王子がくしゃみをする。
「この町なんか変だよ。さっきからすごいくしゃみが出る。」と王子は言った。
「町が変というより、お前が変なんじゃないか?」
とそこへさっきの門番の少年がやってきた。
「さっきから見ていると、その子、くしゃみばかりしてる。」
「お前、門の番してなくていいのか?」
「うーん、べつにいいんじゃないかな、ほとんど誰も来ないし、まちの大人たちも祈りの儀式の準備でいそがしいみたいだし。」
「でも仕事してないの見つかったら、怒られるだろ?」
「うん、でも大丈夫。ぼく怒られるの慣れてるから!」と門番の少年はまた得意げに言った。
「それより、そのくしゃみ、ぼく薬草にくわしい子を知ってるよ。きっと治してくれる。紹介してあげるからついて来なよ。」
「そうか、じゃあクロとカモノハシはそのくしゃみを診てもらえ。俺はここに来ている騎士とやらを見てみたい。' 西域の王 'のことは考えておく。」
シロと王子達はいったん別行動をすることにした。
そして、王子はまたくしゃみをした。
≪登場人物紹介≫
・シロ ・・・ 本当の名をゲンカイ・ナダという。
・クロ ・・・ 本当の名をクロ・ト・ジュノーという。ジュノー王国の王子。
・アオ ・・・ 本当の名をアポトーシス・オルガという。〈死神〉と呼ばれることがある。
・ニジュウヨジ ・・・ オアシスにいたカモノハシ。アオの能力により少女の姿になっている。
・灘よう子 ・・・ 東京で探偵をやっている。
・鴨木紗栄子 ・・・ 灘よう子に仕事を依頼する。
・鴨木邦正 ・・・ 鴨木紗栄子の伯父。植物学者。
・黒戸樹 ・・・ 鴨木紗栄子の夫だった人物。
・蒼井瑠香 ・・・ 医者。
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