赤の騎士
町の中はどこまで行っても質素な家々が並んでいるだけだった。
門番の少年が言うように、大人達は忙しいのかまったく見かけなかった。
ときおり、家の窓からシロを珍しげに見る子供の視線を感じるくらいだった。
' 赤の騎士 ' とは西域の王に仕えている騎士である。西域の王に仕える騎士は、この世界この時代においておよそ最高位の騎士と言ってよかった。
つまり、通常はこのような辺鄙な町には来ない。
小さな町であるがゆえ、シロが ' 赤の騎士 ' を見つけるのにそう時間はかからなかった。
シロが少し先に ' ウマ ' に乗った三人の騎士を見た瞬間、次の瞬間にはシロの真ん前にその三人の騎士はいた。
それはその ' ウマ ' の能力による高速移動である。そしてその次の瞬間には騎士の一人がシロの鼻先にレイピアの切っ先を突き付けていた。
そのスピードでレイピアを操るのはその騎士の能力によるものである。シロは先程の門番の少年の時と同様にレイピアを避けようともしなかったが。
いちおうシロの名誉のために言っておくと、避けられないわけではなく、避けなかっただけである。
「争う気は無い。騎士よ、剣をおさめられよ。」シロは言った。
レイピアを突き付けた騎士は、つけていた仮面をとった。仮面は凝った装飾など一切なく、目と口の部分に丸く穴が開いているだけのものであった。
仮面をとると、その騎士は女性であることが分かった。
騎士は剣をおさめると、
「ナダ殿がなぜこのような場所にいる。ナダ殿...いや
「白蛇などと言うな、俺の名を言いたいのであればシロと呼んでくれ。」とシロは言った。
「それより、お前たちこそなんでこのような町にいるのだ?」とシロは聞いたが、どちらかというと彼らが乗っている ' ウマ ' の方に興味がうつっているようであった。
' ウマ ' とはつまり馬のことであるが、厳密に言うと ' ウマ ' は生物ではない。この時代よりはるかに古代の"生命型兵器"の一種である。
正式には生命型兵器の中でも ' G.G.R・ネイチャー ' と呼ばれるものであった。兵器といっても ' G.G.R・ネイチャー ' は主に移動に特化したものをいう。
赤の騎士達が乗る ' ウマ ' はまさに馬の姿をしていたが、馬の姿をしているのは彼らの趣味に過ぎないだろう。実際には様々な形状をした ' ウマ ' が存在した。例えば"スケートボード"型のものとか。
「' G.G.R・ネイチャー ' か。馬の形とはまた古風だな。しかし、少々故障しているようだぞ。」
「西域には直す部品もありませんし、技師もいない。」と騎士は言った。
「そうか、こんな立派な ' G.G.R・ネイチャー ' がもったいないな。」
シロはとても興味深そうに ' ウマ ' をしげしげとながめていた。
≪登場人物紹介≫
・シロ ・・・ 本当の名をゲンカイ・ナダという。
・クロ ・・・ 本当の名をクロ・ト・ジュノーという。ジュノー王国の王子。
・アオ ・・・ 本当の名をアポトーシス・オルガという。〈死神〉と呼ばれることがある。
・ニジュウヨジ ・・・ オアシスにいたカモノハシ。アオの能力により少女の姿になっている。
・灘よう子 ・・・ 東京で探偵をやっている。
・鴨木紗栄子 ・・・ 灘よう子に仕事を依頼する。
・鴨木邦正 ・・・ 鴨木紗栄子の伯父。植物学者。
・黒戸樹 ・・・ 鴨木紗栄子の夫だった人物。
・蒼井瑠香 ・・・ 医者。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます