町の門番
その町は小さな貧しい町であったが、町の周りは"古代コンクリート"で造られた壁で囲われていた。
壁には門があり、小さな門番がいた。小さなと言っても、シロ達と同じくらいの年齢の少年であった。
シロはその少年に近づいていくと、少年は、
「何者ぞ!」と言い、いきなり、持っていた棒をシロの頭めがけて振り下ろした。
降り降ろされた棒は、そのままシロの頭を打ちつけた。
「ううっいってぇっ」とシロは叫んだ。
棒を降り降ろした少年は、おろおろしていた。
シロが避けようともしなかったのは、彼にとっては予想外の展開であったからだ。頭をかかえてうずくまってしまったが、よほど頑丈な頭をしているのか、しばらくすると立ち上がって言った。
「てめえ、何しやがる!」
「あ、ごめん。申し訳ない。申し訳ない。本当は頭の前ですん止めするつもりだったんだよ。本当だよ。ごめんね。」
「すん止めするなら、きちんとすん止めしろ!このどアホが!」
「ごめんね。ごめんね。」門番の少年は平謝りしていた。
シロとこの少年は、いちおう知り合いであったのである。
「何でお前が門番なんかやってるんだよ。」シロは怒りながら聞いた。
「ひとで不足なんだよ。大人たちは出稼ぎに行ってる。今ここに残っている大人は僧侶ばかりだよ。あとはみんな子供だ。」
「人手不足でも、いきなり人を叩くなよな!」
「だから、ごめんて。」
「この門、開けてくれ。」シロは不機嫌に言った。
「うん、あ、そうだ、ちょっと待って、その前に...」
「何だ?」
「合言葉を言って、『西のドラゴン』」
「『大蛇ドラクレア』だ!」シロは合言葉を答えた。
' 大蛇ドラクレア ' は
「じゃあ、開けてくれ。」
「うん、あ、そうだ。」
「まだ何かあるのか?」
「こないだ、赤の騎士団が来た。まだ中にいるよ。」
"赤い衣を纏った騎士がいるはずだ。" アポトーシス・オルガもそう言っていた。
「お前がそいつらを通したのか?」
「うん、あ、でも、"合言葉"も聞いたし、通していいかちゃんと大人に聞いてきたんだよ。」
少年は得意げに言った。
≪登場人物紹介≫
・シロ ・・・ 本当の名をゲンカイ・ナダという。
・クロ ・・・ 本当の名をクロ・ト・ジュノーという。ジュノー王国の王子。
・アオ ・・・ 本当の名をアポトーシス・オルガという。〈死神〉と呼ばれることがある。
・ニジュウヨジ ・・・ オアシスにいたカモノハシ。アオの能力により少女の姿になっている。
・灘よう子 ・・・ 東京で探偵をやっている。
・鴨木紗栄子 ・・・ 灘よう子に仕事を依頼する。
・鴨木邦正 ・・・ 鴨木紗栄子の伯父。植物学者。
・黒戸樹 ・・・ 鴨木紗栄子の夫だった人物。
・蒼井瑠香 ・・・ 医者。
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