第二章 ≪東京の探偵≫
雑居ビルの探偵
何か夢を見ていたなと思った。
悪い夢?
いや、悪い夢ではない。だけど、切ない夢だった、ような気がした。
目を覚ました瞬間、夢の内容はほとんど忘れてしまった。だけど、夢の中で彼女は男だった。
夢の中で異性になっているというのは、初めてではなかった。
切ない夢だった、誰かを切ないほどに愛していた。
愛していたのに、別れなければならなかった。
***
よう子は切ない気分のまま起き上がった。
繁華街というのは、夜は賑やかだけど朝は驚く程静かだ。ここは本当に繁華街なのかと不思議に思うくらいだ。
よう子は切ない夢を見た後のその切ない気分が大嫌いだった。
コーヒーでも飲もうと思い、食器棚からインスタントコーヒーを取り出した。
よう子はこの雑居ビルの一室で探偵事務所を開いている。探偵といってもくだらない仕事ばかりだ。
浮気調査だとか、猫を探して欲しいとか、あるいは、草むしりをして欲しいとかおよそ探偵とは関係ない作業だとか、ある場所からある場所まで荷物を運んで欲しいなんて犯罪くさい仕事だとか、そんなことを生業としていた。
この雑居ビルにはいろんな住人がいた。明らかに堅気ではなさそうな人達が出入りする部屋とか、違法な風俗を営業している部屋とか、怪しい女医とか。
よう子はとにかくインスタントコーヒーを飲み、切ない気分を払拭しようとした。
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≪登場人物紹介≫
・シロ ・・・ 本当の名をゲンカイ・ナダという。
・クロ ・・・ 本当の名をクロ・ト・ジュノーという。ジュノー王国の王子。
・アオ ・・・ 本当の名をアポトーシス・オルガという。〈死神〉と呼ばれることがある。
・灘よう子 ・・・ 東京で探偵をやっている。
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