朝顔の楽園
威嚇音を発するために顔を真っ赤にしていた' 朝顔 'であったが、
シロが
「水が欲しいのでしょう?少し分けてあげましょう。」
「水入れを私の顔のそばへ近づけて下さいませ。」
シロは水入れにしている"ヒョウタン"を朝顔の顔のそばに近づけた。
「今から頑張って地中から水を吸い上げますから、その"ヒョウタン"に入れて下さいませね。」
朝顔はそう言うと、ずいぶんと踏ん張る顔をした。しばらくすると、朝顔の顔からちょろちょろと水が出てきた。
シロは器用に"ヒョウタン"にその水を入れた。
朝顔が頑張ってくれたので、"ヒョウタン"に水はだいぶ溜まった。
「ああ疲れました。しかしこれで、ナダ様にご恩をお返しすることができました。」
「水はありがたい。だがなぜ俺の本当の名前を知っている?」
「ああ私が知っているのではございません。私の母の母がナダ様を存じ上げていたのでございます。」
「私の母の母にナダ様が水を下さったのでございますよ。ナダ様はお忘れになりましたか?」
「そう言われても、朝顔はみんな同じ顔しているからな、わからん。」
シロがそう言うと、朝顔はふふと笑い、同じではございませんよ。と言った。
「朝顔よ、お前はなぜお前の母の母のことを知っているのだ?朝顔は一年しか生きられぬだろう?」
とアオが聞いた。
「おお、あなたは〈死神〉アポトーシス・オルガ様ですね。その名は聞き及んでおります。」
「私たち植物は、あなた様方のように複雑なニューロン・ノードを持っておりませんゆえ、母の母の記憶くらいは維持しております。」
「お前は、私のことも知っているのだな。しかも〈死神〉などと。」
風の噂でございますよ。風達は様々な噂話をしていきますから。朝顔はまた、ふふと笑った。
「そうか、風が死神と噂をしているか。」
「この近くに小さなオアシスがあるはずでございます。そこには私の兄弟姉妹たちもいるでしょう。」
「兄弟がいるなら、お前も連れて行ってやろう。」
「ナダ様、私がここに根を下ろしたのも何かの運命でございましょう。」
風が私たちの花粉を飛ばしてくれています。私もそのうち種をつけ、種を落とします。
この地はやがて私の子供たちの楽園になるでしょう。
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≪登場人物紹介≫
・シロ ・・・ 本当の名をゲンカイ・ナダという。
・クロ ・・・ 本当の名をクロ・ト・ジュノーという。ジュノー王国の王子。
・アオ ・・・ 本当の名をアポトーシス・オルガという。〈死神〉と呼ばれることがある。
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