砂漠の朝顔

「おい、朝だ。」シロはクロを揺すって起こした。


クロはいつの間にか寝てしまっていたんだと思った。


地平線の向こうに太陽が見えた。なんと美しい神々しい光景だろうかと思った。


「朝のうちは少しは涼しい、水のある場所を探そう。」


とシロは言って、早々に出かけようとした。


「ちょっと待って、まだ顔も洗ってないよ。」


「あのな、そのお顔を洗うお水も無いの!」シロは呆れるように言った。



***



移動するうち、異音を発するものがあった。それは' 朝顔 'だった。砂漠の真ん中に' 朝顔 'が一輪咲いていたのである。


朝顔は顔を真っ赤にして、「ピーピー、ピーピー、ピーピー」と音を発していた。


「' 朝顔 'が威嚇音を発しています。」とアオが言った。


シロはおもむろに朝顔に近づくと、根元ねもとを掘り起こそうとした。


「ああやめて下さいまし、乱暴はやめて下さいまし。人が近づいてきたので驚いていただけでございます。」


それでもシロは掘り起こすのをやめなかった。


しかし、掘っても掘っても、朝顔の根っこは、いつまでも地中深くまで続いているようでキリがなかった。


「水脈をお探しですね。しかし私は頑張ったのです。かなり深くまで根を下ろしました。掘るのをおやめ下さいまし。」


「なんの因果か、種だった私はこんな所まで飛ばされてきたのです。生きるために必死に根を下ろしたのでございます。」


朝顔の咲く場所には水脈があるのだ。


シロはとりあえず朝顔の言うことを聞くことにして根元を掘るのをやめた。





------------------------------

≪登場人物紹介≫

・シロ ・・・ 本当の名をゲンカイ・ナダという。

・クロ ・・・ 本当の名をクロ・ト・ジュノーという。ジュノー王国の王子。

・アオ ・・・ 本当の名をアポトーシス・オルガという。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る