クロとシロとアオ 〈3人の冒険の始まり〉
「中興の祖となるであろう。」花々の言葉が渦を巻いていた。
父王は腰を下ろすと、少年を抱きしめ、
「' 時 ' が来た。」と言った。
「お前は旅に出なければならない。王になるための試練だ。」
少年は不安そうな顔を隠すことは出来なかった。
「中興の祖となるであろう。」
花々の言葉がよりいっそう強くなると、その言葉の渦が少年を取り囲んだ瞬間、少年は姿を消した。
「うううっっっわぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~っっ」
吃驚したのは、クロ王子ではなかった。
いや、クロ・ト・ジュノーも驚いてはいたが、声を上げたのはクロの目の前にいる少年であった。
何もない空間に唐突に人が現れれば、その少年でなくとも驚くであろう。
「なんだお前は!」とその少年は言ったが、「ここはどこじゃ?」とクロ王子は聞き返した。
「いや、お前は何なんだよ!!」と少年は怒っていた。
辺りは、一面の砂漠であった。砂以外には何もなかった。
クロの目の前にいる少年は、クロとは正反対の浅黒く日焼けした"やんちゃそうな男の子"であった。
粗末な衣服を着ており、顔にもところどころに傷跡があった。相当に"危険なこと"もしてきたのであろう。
怒っていた少年は、少し何かを考えているようであったが、
冷静さを取り戻したのか、
「俺は ' ゲンカイ・ナダ ' だ。本当の名前だ。」と名乗り、
「お前の名前は何だ?」と聞いた。
クロは少し考えた後、「いや、名前は教えぬ。」と言った。
「シロ様、サーチ致しましょう。」ナダの後ろに付き従うように立っていた者が、ナダに跪くようにしてそう言った。
その者はゲンカイ・ナダ のことをシロと呼んだ。
「いや、名乗りたくない者の名を知る必要はない。」とナダは言った。
ナダの従者と思われる者は、ナダのように粗末な服ではなかった。
全身を青い衣で覆っており、フードをかぶり、顔には牛の頭蓋骨を模した仮面をつけていた。
砂漠だというのに砂粒ひとつついていない綺麗な服であった。砂漠の太陽の光が反射して、青く光って見えた。
その声からその者は女性であるようだった。
「この者はアオだ。」とナダが言った。
「本当の名前は、アポトーシス・オルガでございます。」
「略してアオだ。」とナダは言った。
「お前の名はクロだ。俺のことはシロと呼べ。」とナダは言った。
当てずっぽうなのだろうか?
なぜ私の名が分かったのだろう。クロ王子は訝しんだ。
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