第89話【👻霊感少女カスミ③】


 イジメ撲滅運動の調査報告書が私の目の前にある。


 ワードでまとめられた、ちゃんとして見える報告書だった。

 しかもパソコンで打ったのは小5の蒼君、私が小5の時なんて男子と一緒に公園で走り回って遊んでたな、と思うと泣けて来た。


 ※娘の名前【楓】6歳、容姿は母親似で可愛い


 ※イジメをしてるという生徒の名前【河原崎慎太郎】


 ※涼さん(薄毛)の元奥さん【麻里子】同じ大学(京都大学)の同級生で、清楚系の美人


 ※楓の友達【山田小鈴】

 幼稚園からの仲良し


 調査報告

 入学してから2ヶ月後位から、楓の持ち物が無くなることが時々あり、しかも不思議な事に数日後には机の中に戻っている。

 慎太郎はことある毎に楓のことをからかってくる。


 休みの日には楓の家の近くを歩いていて、楓の顔を見ると「あっかんべー」をして走り去る。



 私はそれを読みながら、それって陽介と同じやんって思った。

 卒業の時に告られてびっくりしたっけ、タイプじゃなかったから断ったけど。


「それってさぁ、イジメちゃうんちゃう? 」


 調査をしたのは顔面偏差値高めのヤッシーと神童の蒼太


「だね、態度はめんどくさいけど楓ちゃんの事を好きなんだと思う、僕にも同じような経験がある、妄想だったけどね」


 ヤッシーの顔を薄ら笑いを浮かべて見ながら私は言った。


「なんで妄想やねん、コミュ障にも程があるわ」


 一色触発、二人がいつもの言い争いするのを止めるためなのだろう、蒼君が声変わり前のソプラノで話しに割り込んで来た。


「僕にも、経験あるからわかるけど、確実に慎太郎君は楓ちゃんの事を好きなんだと思う」

 と、一瞬遠い目をした。


 なんだコイツも可愛いとこあるやん。


 遠くから私たちが話しているのを心配そうに見ている涼さん(薄毛)の方を見た。


(結界を張って私たちの会話を聞けなくしている)


 二人が調べた報告書には続きがあった。


 涼さん(薄毛)の元奥さんの麻里子さんが、本当は離婚を望んでいなかったということがわかった。

 リストラにショックを受けてた夫にハッパをかけるためにだけ書いた離婚届にさっさとサインをして、愛する二人の前から姿を消した。

本当は離婚なんて望んでいなかったなんて、昭和のメロドラマやん


「まったく、やるせない話しやね、あのハゲ親父何やっとんねん」

 ますます、かけ違ったボタンを治してあげたくなった。


「カスミちゃんは、口は悪いけど優しいんだね、僕が生きてたら好きになってるかも」


 おいおい、幽霊に告られても嬉しくないわ。でもまぁイケメンやし悪い気はしない。


「報告書はこんな感じだけど、さて何から始める? 僕が慎太郎君の夢の中にでも入る? 」


 なるほど、とにかく楓ちゃんが心を痛めてるというのは伝えるべきだと思った。


「そやね、その作戦で行こう、ヤッシー、蒼君頼んだよ」


「まずは、楓ちゃんと慎太郎君に本当のことを上手く伝えることだね、おかしいなぁ~生きてる時はこんなに積極的になれなかったのになぁ」

 と頭を傾げるヤッシーをみた。


 ほんの少しでも、ヤッシーにも自分の事を好きになってからちゃんと成仏して欲しいなと思った。


 まずは涼さんだ。


(つづく)



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る