第88話【👻霊感少女カスミ②】
「とにかくさ、ヤッシーと蒼君でその小学校に行ってイジメの現場を確認してきてや」
「ぇっ?カスミちゃんは? 」
「私が行くと怪しまれるだけやん、あんた達なら透明やし、どこでも行けるやろ? 交通費もかからへんし」
イジメ撲滅作戦会議をするのは真夜中で、私は眠いのを我慢しながら三人と計画を練る。
「やっぱり、僕が行くのはまずいでしょうか? 娘の姿を一目でも見たいのですが……」
薄毛サラリーマンはさっきから同じことを何回も主張している。
「おっちゃんアホちゃうか? そんなのアカンに決まってるやろ、例えば刑事だって身内の捜査にはつかせてもらえへんやん、私情が入ると捜査にならへんやん」
ドラマのセリフを思い出しながら私は薄毛サラリーマンにダメ出しをした。
「てか、小学校の名前は? 」
その名前を聞いて耳を疑った。
関西でも有名な私立大学の附属の小学校で、裕福もしくは有能な人の子どもばかりが通う学園だった。
「おっちゃんってさ、大学何処に行ってたん」
恐る恐る聞いてみる。
「京都大学です、学部は大したことはない文学部ですが……」
マジか??
「ほんなら、偏差値もええやんな? 」
「平均で70位です、ほぼ底辺ですよ」
「なんやねん、イヤミやろ!それ、ほしたら受験の時に答えを耳元で囁いてくれへん、それくらい出来るんちゃうの? 船場吉兆の女将みたいにさ 」
偏差値50前後の私とは違うに決まってる。京都大学出てリストラされるってよっぽどだったのかと心配になった。
「まだ、その話し続くの? いい加減作戦について話しをしないと、僕のYouTubeを観る時間が無くなるでしょ」
ちょっとキレ気味に小5に言われて少しムカついたけど、確かに、私だって明日の学校のために寝たい。
その会話を止めたのはヤッシーだった。
「とりあえず、僕と蒼君で、様子を見てくるよ、それでいいでしょ!ところで僕も偏差値は70位だったよ、受験の前の日に食中毒で受験には失敗したけど……」
名前が残念なイケメン幽霊が寂しいそうに呟いた。
マジか?三流の大学に入学したのは仕方ないってそれが原因だったのか?
もしかして?蒼君も?
「あ~僕のことも知りたいって今思ったでしょ、僕も全国模試で5位より下になったことないよ」
涼しい顔をして、生意気な小学生が言う。
イカン心を読み取られてる。
てかなんでやねん。
顔面偏差値&偏差値高めのオタク男子と、高学歴リストラ男とやんちゃ坊主だけど神童の小学生、何が嬉しくてビリギャルの私に憑いてるのだろう。
「カスミちゃん、顔色悪いけど大丈夫? 」
もはや霊体にさえ心配される始末。
「とにかく、明日から調査お願いね」とだけ言って布団を頭から被った。
「カスミちゃん、とにかく薄毛サラリーマンというのはやめてください、これでも気にしてるんですから、僕には涼と言う名前がありますから、涼さんとか涼君とかいくらでもあるでしょう」
名前だけイケメンのサラリーマンが苦情を言ってきた。
布団から顔だけ出して私は返事をする。
「考えとくわ」
現実から逃げようともう一度布団を被ってみる。
シースルー涼?
リアップ涼さん?
アカンそんなのしか思い浮かばない、ひつじの数を数えるようにぶつぶつ口に出しながら、ようやく眠りについた。
(つづく)
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