第77話【ベルの音が聞こえる】ラブコメ?


 話の合う男の子は、その話の合う分だけ女の子だということを知っておかなければならない。


「どうして話が合うのに何か頼りないのだろう、どうして話が合うのに恋心って湧かないんだろう」


 話の合うボーイフレンドは永遠にボーイのフレンド止まりです。

 それが嫌なら、話の合わない男の人を探さなければなりません。

 きっとそれが恋人になれる男の人です。


 恋に落ちる時に、チリンだったり、カラーンだったり鐘がなるっていいますよね。


 それって皆さん経験ありますか?


 お前はどうなんや?

 ふふふっそれは秘密です。


 この物語の主人公にはけたたましいベルが鳴り響いたのです。

 まさに警告音のように……そんな女の子のお話です。


 中学を卒業して念願のJKへとなった小林なつみにはある計画がありました。

 生まれつきの癖毛を縮毛矯正してサラサラのセミロングにし、小5の時から愛用していた眼鏡をコンタクトに替えて高校生活を迎えたのですが、期待していたのと全く反してその高校の男子には、真面目と背中にtattoでもしているのか?

と思うほどイケていない男子ばかり。


「まったくもう、長年貯めたお年玉をほとんど叩いたのに何よこれ」

なつみが空想していた高校生活は初日から崩れ去りました。



 1年B組女子は20人、男子は11人でとにかく女子が多い。

 圧倒的不利です!

もちろんクラスに1人としてイケメンはいないのだからそれだけはよかったのでしょう。


 なつみはため息をついた。


「こんな高校生活ってどうなのよ、期待して損しちゃった、受験の時に見かけた何人かのイケメンは何処に行っちゃったのよ」


 入学式で仲良くなった隣の席の増田

彩絵さえに話しかけた。


「そうよね~受験の時に私もタイプの男子いたのに………この学校ってさ偏差値45でも入れんのよ、まさか落ちたってこと?私も期待してたのに、やってらんないわよね」


「ほんとそれ!明日からは髪型整えるために早起きするのやめよっと、だって無駄だもん」


 その時、教室の扉がガラガラと開いて担任のおじさんが入って来た。

 まぁおじさんっていっても30そこそこなのだろうけれど、高校生達にとっては立派なおじさんだ。


 なつみの脳内にけたたましい程のベルがなったのはそれで2度目だった。


 1度目は入学式で担任紹介された時体育館での事だった。


「なんなのよ、なんでこんなおじさんの登場で変な音が聞こえるのよ、ねえ増田さん聞こえた? 」


「嫌だ、増田さんなんて~彩絵でいいよ~私もなつみって呼ぶからさぁ~」


 どうやら彩絵には何も聞こえてはいないようだった。


 担任の名前は、武田たけだ健人けんと名前だけはそこそこイケメンだけど。

 ヒョロヒョロとしたまるでのような教師だった。

 担当の教科は納得の国語教師

(なんで納得?)


 きっと本ばっかり読んでいたのだろう、少し分厚めのメガネをかけている。

 そりゃ私も本が好きだけどさ、なんて思いながらの話を聞いていた。


 まさかこのに恋をするなんて思ってもみなかったし、それ以降はあのベルの音が聞こえる事はなかった。


 それなりに高校生活は楽しんだ、近くの男子校にはそれなりにイケてる男子もいたし、付き合うことだってあった。

 でもせいぜい3ヶ月が限度だったけれど、なつみも彩絵も、そのアオハルとやらを楽しんだ。


 なつみには敬愛する小説家がいた、恋愛小説を書く林田悠介ゆうすけという作家。

繊細な心理描写や情景描写に夢中になっていた。

 ベストセラー作家でもあるのにプライベートが秘密にされていることにも興味を覚えていた。


「こんな恋愛してみたい」

 林田悠介の新刊『風の余韻』を読み終えてため息をついた。


 まさか、その作者があのだとはその時なつみは知らずにいた。


 3年になった今、担任からは外れていたけれど国語の宿題に読書感想文を出すようにと言われたなつみは躊躇ためらわずに『風の余韻』の感想文を書いた。


 ~主人公のトキオが、ユカコに想いを伝える部分と風の吹く場所での別れのシーンには涙が溢れててしまいました。20年の月日が経った後に思い出の場所で再び巡り合った2人にはそれぞれの生活があったけれど、2度目の別れのシーンには涙は似合わないと思いましたし、そして結ばれなくても出会ったことは必然であったのだろうと思いました~


 その感想文を読んだからコメントが書かれていた。


 ~作者冥利に尽きる感想文でした。

 素敵な言葉を受け取らせて貰いました、ありがとう~


家に帰って返された作文にコメントが書いてあるのに気がついた。



「えっ?どういうこと?林田悠介ゆうすけ?いやそんなはずない」


 部屋の勉強机の椅子に座っていたなつみは胸がドキドキするのを感じた。


 確かに林田悠介ゆうすけ作品にはよくあるポートレートはのっていない、出身大学が書いているけれど、地方の国立大学でなつみにとっては馴染みのない場所だった。


 の出身大学は何処なんだろう?

 眠れない夜を過ごしたなつみは次の日の朝少し早めに学校へ行き職員室へと向かった。


 扉をノックして職員室の扉を開いた、その時にまた例のあのベルの音が鳴るのを聞いた。


「おはようございます!武田先生いらっしゃいますか? 」


 職員室の窓からは涼しい風が吹いていて、寝癖なのか頭が少しボサボサのがなつみのそばにやってきた。

「おはようございます小林さん、早いですね」


「あの、先生………出身大学ってどこですか? 」


 なつみの聞いた大学名はやっぱり林田悠介ゆうすけのプロフィールと同じだった。


「『風の余韻』好きです! 」


 まるで愛の告白のようになつみはに言った。


 話が合うとか合わないとかではなくて、なつみの心に鐘が鳴り響いたのだ。


 それはきっと運命なのだろう。



 ~了

◆作者あとがき

( ̄^ ̄ゞおしまいっす!

謎のもやし推し失礼しましたo┐ペコリ

返品、苦情、誹謗中傷お断りします。

👤黒執事「奥さま~!いつの間に!アワアワ(・゚д゚`≡・゚д゚`)」

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