第74話【怪談~電話】改稿版*地の文付き
ルイには誰にも秘密にしていた不思議な力があった、親に言っても信じては貰えないことから誰にも言わない事にしていたけれど、今年に入ってからのコロナウィルスのおかげで自宅にいることが増えてから、再び不思議なことが増えてきた。
小学生の頃から共働きの両親が帰ってくるまでの数時間はたった1人で留守番をしていた。
元々、本を読むのが好きで1人で過ごすこと自体寂しいとは思っていなかったけれど、リビングで1人で待っていると時折不思議な事が起こっていた。
留守番をしている娘を案じて、祖母や母親から電話が掛かってくるのだが、そのほとんどが数秒前に気がつくのだ。
「あっ母さんだ」
「今度はおばあちゃんから」
誰から電話が掛かって来たのかが分かってしまう。
中学に入る頃に初めて携帯電話を持つことになりそれぞれが好きな時間に電話を掛けることが出来る、家の電話が鳴ることが少なくなりつつあった。
この春、学校は緊急事態発生と共に長い自宅待機になった。
そして、あの不思議なことが再びルイを悩ませる事になった。
食品関係の父親も、看護師として働く母親も朝から忙しそうに仕事へと向かう。
帰宅するまでの長い時間をたった1人で過ごす。
そんな時のルイの楽しみは親友とLINEや無料通話で話すことだった。
その日も親友のユカといつものように会話をしていた。
ひとしきり恋バナで盛り上がった2人。
「あのさ、ユカちょっと聞いて欲しいことがあるんだけど」
高校に入って仲が良くなったユカといつも行動を共にしている。唯一本音を言える友だちが出来たことで高校生活をより一層楽しむことが出来ている。
「何? 誰か好きな人でも出来たの? 」
「うん、まあそれもないことはないんだけど、それじゃなくてさ」
「松田君の事だよねルイが好きなのって」
クラスでも人気者の松田君を好きな事はユカにはまだ話してはいなかった。
「なんで知ってるのよ」
「そんなもん、いつから友だちやってると思ってるのよ、ルイの事ならわかっちゃうよ」
「ハハ、そうだよねバレバレだったか、だけどその話じゃないのよ」
ユカには隠し事なんて出来ないことをすっかり忘れていた、いつか告白しようと思っていたことを言い当てられて嬉しく思った。
でも聞いてもらいたいことは、恋の話でも何でもなかった。
「なによ、家で何かあったの? 悩みごと? 」
少し黙っていたルイは、思い切ってその事を話そうと思った。
「私さぁ、子どもの頃からなんだけど、電話がなる前に誰から掛かるかわかっちゃうの」
「へぇーそんな話聞いたことあるけど、ルイもそうなんだ!スゴいじゃん」
こんなことは別に凄くなんてないのにと思いながら話を続けた。
「あっ鳴るな?って思ったら顔が浮かぶのよ」
「あ~便利だねぇー」
「まぁ、確かに便利といえば便利なんだけど」
「なんか変な電話とか来るの? 今はスマホばっかりで
確かにたまには、新築マンションのことや、資産運営などの電話が掛かって来ることもある、そんな時は『母は今いません』と言えばやり過ごせる。
「そうそう、あとはオレオレ詐欺とかね」
「本当、年寄り騙して最低だよね」
「私が言ってるのはさ、そんなんじゃないのよ、この頃一日に1回くらい掛かってくるの」
「え? 間違い電話じゃなくて? 」
「それがさ、間違い電話だと思ったのよ、最初は……」
「嫌な電話なの? 昔さぁ小学生のころ、留守番してる時に変な電話掛かって来たことあるよ~パンツ履いてるかなんて、変態から」
「確かに、そんなことする人いるよね~、でもさ、そんなんでもなくって、電話がなる前に顔が浮かぶっていったでしょ、それが浮かぶ顔がいつも真っ黒なのよ」
家族から掛かってくる時はハッキリと顔が浮かぶし、知らない人からの電話は男か女なのかは最低でも分かるし微かに風貌さえ感じることができる。
でも、このところ掛かってくる電話の相手は黒いだけではなくて暗い闇に覆われたようにしか見えないだ。
「何それ、真っ黒って」
「わかんないんだけどね、そんな真っ黒な顔が浮かんで、電話が鳴り続けてるから仕方なく受話器をとったらさ……無言なのよ」
「何それ、やっぱり変態じゃないの? 」
「最初はそうだと思ったんだよね、でも今までに10回以上掛かって来てるんだけど、黒い顔そして……無言なのよ」
そんな時は慌てて受話器を置くけれど心が妙にざわつくのをいつも感じていた。
「ストーカーとかだったら怖いから警察に届けたら? エスカレートする前にさ」
「うん、そうだよね、でも何も言うわけでもないし、放置しちゃってるのよ、しかも掛かって来るのって誰もいない1人の時だけだし、言っても信じて貰えないと思うし……」
「ナンバーディスプレイとかにしてみたら? ルイん家やってないの? 」
ユカはそう言ってくれたけれど、ルイの家では何年も前からナンバーディスプレイにしている、鍵っ子だった娘を安心させる事と知らない人からの電話に出なくても良いことから心配性な父親は対応の電話機を用意して契約にプラスしていた。
「ずっと前からナンバーディスプレイだよ、でもさ、その電話が掛かった時は何も表示されないのよ、しかも後で確認しても履歴にすら残ってない、なんか変だよね」
「マジで怖い、てかキモいね」
「ハハハ、別にキモいって思ってはないんだけどね……気になっちゃって」
「確かに不思議だよね、ルイってさ霊感ってあったっけ? 何か見えちゃう系の人だったっけ 」
ルイには霊感などない、というか怖いのは怖いのだけど、信じてもいないし、信じたくはないと思っていた。
「きゃー怖いこと言わないでよ、ないよ~霊感なんてさ……ただ電話の時だけなのよ 昔から」
「でも、掛けて来る人わかんないんだし、あまり気にしない方がいいよ」
「そうだよね……ユカに話してちょっと安心したよ」
その時あの嫌な気配を感じた。
いつものようにリビングの電話が鳴る予感がしたのだ。
「あ…………ちょっと待って……電話が鳴る気がする」
「誰から?………また?黒い顔? 」
ルイの返事を聞く前に電話の音が聞こえて来た。
何度も鳴り続ける音、いつもそうなのだ、受話器を取るまで鳴り続けるのだ。
「…………………………ちょっと、出てみるから、ユカ待っててくれるよね」
そう言ってスマホを持ったままリビングへと行き、ルイは受話器を取った。
「もしもし……もしもし……」
ルイの声が何度も聞こえてきた。
「ルイ!大丈夫?今からそっちに行こうか?」
「………………………………」
「ルイってば!どうしたの…………!返事してよ!!! すぐ行くから待ってて! ルイ!聞こえてるなら返事してよ━━━━━!!!」
「…………………………………………………………キャ━━━━━━!」
「ルイ!ルイ!ルイ━━━━━!
お願いだから、返事してよ! 」
受話器を持つルイは暗い闇に覆われたたまま、スマホから聞こえるユカに助けを求めることも出来ないほどの恐怖に飲まれていった。
死神だったのかもしれないと気付いた時には、もうすでに遅かったのかもしれない。
【了】
*会話はほぼそのままに、地の文を追加してみました。
物語になってますかねぇ~💦
コメントやご意見お願いいたします。
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