第67話【団地暮らしのアリス②】

「全く、あんたに彼氏が出来るなんて、納得いかない!しかもイケメンなんて許せない! 」

 そういう友達の声を聞きながら、いつ反論しようかと思っている春夏の目の前で美味しそうにうどんをすする学校で唯一親友と呼べる里美。


 彼氏なんて生まれてこの方出来たことなんてない事は本人が一番わかりきっているなどと思いながら里美に反論した。


「里美……訳分からないこと言わないで、まったく身に覚えないんだけど……」


 親友の悲しい恋の遍歴なんて分かっているはずなのだ。

 春夏には生まれてこの方彼氏なんぞ出来たことなどない。


「ほら、話題の彼氏が来たわよアリス」


 春夏がこの学食の一番人気の生姜焼き定食の付け合せキャベツの千切りを口に入れた瞬間に驚いて持ってる箸を落としそうになった。

 アリス?

 もしかして今アリスって言った??

 ~そうですね、言いましたよね~


 そして夢で恋人繋ぎをしたアランさんがいつの間にかいた、髪の毛の色こそ違うが、まごうことの無いほど瓜二つの男子学生の姿をして。


「アリス、おはよう何を驚いてるんだよ」


 あ、……やっぱりアリスって?

~どうやら夢と繋がっているようですね~


 春夏は夢の中にいるのかと右のほっぺをつまんでみる、とにかく夢などではないことに気がついた。


亜蘭アラン君おはよう、相変わらずラブラブだね、私は退散するから、ここに座って!アリスまたね~」


 里美は春夏に小さくウインクしながら、トレイを持って立ち上がった。



 春夏の目の前には、銀髪ではないアラン君がいるのである、春夏は頭の中の記憶を手繰り寄せることで精一杯だった。


「アリス、なんだよそんなびっくりした顔をして、彼氏の顔忘れたのか」

 春夏は一生懸命思い出そうとしていたけれど、思い出せない事に苛立ちさえ覚えた。


 これは返事をするしかない、とりあえず話を合わせてみるのが精一杯だった。


「おはよう」

 アランは優しくアリス(春夏)の頭をぽんぽんとして里美が座っていた場所ではなく春夏の隣に座った。



「昨日はありがとう助かったよ、さすが僕の彼女だよ 」


 春夏は昨日の事を思い出してみる、特別なことなど全くない、学校に行って、バイト先のスーパーで品出しをして普通に帰って来ただけだ。


 こんなイケメンを彼氏にする夢ような出来事なんて皆無だった。


 今朝の事を思い出してみた。

 古い団地の3Kの春夏の部屋は四畳半、そこに無理矢理ベッドを押し込んでいるから、ほぼ毎日ベッドの上で過ごしているようなものだ。

 目覚ましを止めた時にほんの少し夢を見ていたことを思い出して幸せな気分になった。

 恋人繋ぎをしたことだけははっきりと覚えていて、感触さえ残っている。

 でもそれは夢の中の話で現実ではないはずだ。


 でも夢の中で会った人物が今ここにいる、しかも恋人だという設定だ。

 驚かないはずはない。


「2人とも相変わらず仲がいいね~」

 声を掛けて来たのは、あのお金持ちの

 栗栖さんだった。




 果たしてアリスは……


 ……To be continued

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