第54話ゾロ目企画第2弾作品【なんちゃって異世界転移】
知らない間にこの世界の片隅(小説投稿サイト)に生きている。
異世界、転生、魔王、悪役令嬢、ラノベ、幼馴染
そんなの知らなかったし私には関係ないと思っていた。
でもこの場所はいったいどこなのだろうか?
異世界?
転生?
転移?
私は断じて死んではいない。
生きてるんだ。
まったく意味がわからない、遠くには宮殿が見えるし(魔王城?)、羽根の生えた小さな人達もさっきから何度も見かけるし……気持ちの悪いモンスターもいる
(ドラゴンみたいなやつとか)
わけがわからない……
でも……分かっている事がひとつだけある『お腹がすいている』のだ。
確か昨晩はマクドナルドの大好きなフィレオフィッシュのセットを食べたはずだ、ポテトではなくてコーンを選んで。
何時間たったのだろうと腕時計に目を向ける。止まっている長い針と小さい針
ポケットに入ったままのスマホを取り出し電源を入れる。
スマホの画面には可愛い猫たちの画像の上の日付けが目に入った。
20XX年2月22日と記されていた。
今年は2020年のオリンピックイヤーだったはずなのだ。
夢なのか?悪い夢なのか?
そんなことはこの際どうでもいい。
私はお腹が空くと機嫌が悪くなる、昨日もそうだった。
恋人が運転する軽自動車の助手席で不機嫌な顔をしてる私に彼は言った。
「そろそろ俺ら結婚する?」
イヤイヤちょっと待て!
今のこの状況で言う言葉なのか?
返事をしない私に彼は追い討ちを掛けてくる「ハワイで結婚式あげて、戻ってから披露パーティーとかさ~ええんちゃう?」
そりゃそんな結婚式を挙げたいと思うよ……でも今は……とりあえず何か食わせろよ!
さっきからガストだの丸亀製麺だの通り過ぎてるやんか!
心の中で殺意すら湧いてくる。
だいたいこんな場所でプロポーズする人おる?
素敵なレストランとかでするんちゃうの?
そんなヤツいてるん?
いや!ここにいるわ!!!
「もういい!帰るから」
私の言葉に初めて不機嫌なことに気がついたのか、慌てる幸太郎を振り切って車から飛び出した。
飛び出したはいいが知らない土地なのだ、追いかけてくる幸太郎の軽自動車から逃げるようにタクシーに飛び乗る。
まるで何かの犯人のように「あの車をまいてください」と運転手に言う。
黒い服を着た初老の男性は、わかりましたと言い小さな道に入る。
何とか幸太郎の車から逃れることができた
自宅アパートの近くのマクドナルドの前で下ろしてもらい。
いつものフィレオフィッシュセットを頼んだ。
空腹から解放された私は我に返った、プロポーズされたのに返事もせずに逃げるように帰ってきたのだ……幸太郎はのんびり屋であまり怒らない、私が怒ると自分が悪くなくても「ごめんごめん」と言う。だからこそ何年も付き合って来れたのだと思う。
こんなこじらせた女をだ……
覚えてるのはここまでのことだった、気がつけばこうして訳の分からない場所に立っている、しかも空腹に舞い戻っているのだ。
まったくわけがわからない。
周りを見渡して見ると遠くに小さな小屋らしき物が見えた。
とりあえずそこに人がいるかもしれないのだ、草原と湖の景色のとても良いところだと気がついたがそこらじゅうに見たこともないようなモンスターがいる。
どうしてなのかわからないのだが彼らは私を見ていない。というか見えていないようだ……まったくわけがわからない。
襲って来る気配もないと気づいた私は大胆になった。
仕事帰りだったのでハイヒールを履いていたのだ。そんな靴では草が生えている道を歩くには歩きにくい。
私はハイヒールを両手に持って歩き始めた。
小屋の周りには小さな花壇もあり、暖炉に使うような薪も置いてある
人が住んでいる気配は充分感じられた。
ドアの上には古い映画で見るような鉄の輪っかがあった。
多分これがドアベルの代わりだろう、 魔女が出てきたらどうしようかとも思ったが、何しろお腹が空いているのだ。
思い切ってその鉄の輪っかを打ち鳴らした。
何度か鳴らしたあとに静かにドアが開いた。
「はい」
そこから出て来たのは1人の紳士だった。
しかもどこかで見たことがある
「すみません道に迷ってしまって」
どこかの童話のように声を掛けた。
いきなりお腹空いてるから何か食べさせてとは言えない。
「どうぞ、中にお入りください」
部屋に通された私は小さなソファに座るようにと言われ、古いが座り心地の良いそのソファに腰掛けた。
不思議な事に気がついた。
この家の住人をどこかで見たことがある。
━━タクシーの運転手さんだ━━━
不思議な世界に見えたけれど、もしかしたらここは日本のどこかなのかもしれない。
紅茶とスコーンを持って来た紳士に思い切って聞いてみた
「あの……ここはいったいどこですか? 」
「どうぞ、まずはお召し上がりください 」
暖かい紅茶に添えられたミルクを入れて飲んだ
「美味しいです」
スコーンにはブルーベリーのジャムを付けて食べた。(ヤバい!かなり美味しい! )
1人がけの椅子に座って静かに紳士は話し出した。
「そうですね……ここはあなた様が苦手としている場所かもしれませんね 」
「苦手?………そして私を知っているということですか? 」
「知っていると言うのは語弊があるかもしれませんが、ワタクシはいつも貴方様の傍におりますよ」
まったくわからない!
何を言ってるんだろうかこの爺さんは………
「まったくわかりません、ここが何処なのかも……爺さ……あなたも」
「仕方ないことですね……ここは貴方がみる夢の中ですし、この夢の世界の中でも一番苦手としている異世界なのですから」
もちろん小説投稿サイトで異世界物が人気なのは良く知っている。
書籍化やアニメ化されるのはこのカテゴリーに属していないと難しいとされている。
確かに苦手だ!
とにかく登場人物の名前や魔物達の名前がたくさん出るとわけが分からなくなってくる。
苦手だけど夢の中に出てくるというのは書いてみたいと思っているのだろうか?
「あの……もしかしてタクシーの運転手をしていますか? 」
*******
「明日香起きて!マクドに着いたで」
幸太郎の声が遠くから聞こえた気がした。
寝ぼけた私は幸太郎に聞いた。
「運転手さんは? 」
「何寝ぼけたこと言ってるんだよ、さぁ食べるぞ、今日もフィレオフィッシュセットやんな〜」
その後夢と同じ場面でプロポーズを受けて、今度はちゃんとOKをした。
そして今は幸せに(概ね)暮らしている。
👽👽👽👽👽👽👽👽👽👽👽
タクシーの運転手だった初老の男性は黒執事として妄想の世界に生きることになった。
主人公━━西園寺明日香(アラサー)
夫━━━━西園寺幸太郎(海外勤務設定)
👤黒執事━松原ハルク(還暦のお爺、イケメン設定)
(思いつきなので名称は変わるかも)
引き続き黒執事シリーズをお読み頂けたら幸いです。
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