第53話ゾロ目企画第1弾作品【キュウリグサ】
「キュウリグサ」
古本の中に入っていた押し花のしおり「キュウリグサ」と手書きで小さく書いてある。
誰がそのページに挟んだのだろうと思いを馳せる。
私が好きになったあの人は沢山の本を読んでいた、少しでも近づきたくて私も本を読んだ。
学校の図書室で初めて出会ったあの日に恋をした。
彼が手にした本をこっそり覗き見ることしか出来なかったけど、私はその日に古本屋でその本を見つけた。梶井基次郎の「檸檬」
あの人がこの本を読んで感じたものと違うかもしれないけれど、私もこの作品を好きになった。
古本屋で見つけたその本の中にこのしおりを見つけた、そしてこのしおりを今でも大切にしている。
キュウリグサと言う名前の花をネットで調べた。
「野山に咲く花、葉を揉むと微かにキュウリの香りがする」
花屋には売っていない
こんな小さな花たちが好きだ
誰にも気づかれないかもしれない花たちが好きだ。
それは何故なのだろう
私自身が目立つ存在にはなれないからなのか?
コンクリートの隙間から命を繋いでいた草からやがて小さな花を咲かす。
そんな小さな花でも恋をするのだ
放課後の図書室で私は恋をした。
この気持ちを伝えよう。
ポケットに忍ばせたキュウリグサのしおりは私に勇気を与えてくれるだろうか?
ある日のこといつものように放課後に図書室へ向かった。
そこには大好きなあの人がいた、でもいつもと違うのは隣に女の子がいた事だった。
楽しそうに小声で話す2人を見るのは辛い、悲しいけれどお似合いの2人なんだ。
失恋は確定だ……
目立たない小さな花を選んでくれるなんて遠い夢。
図書室の引き戸を開けた時に声を掛けられた「あの?このしおり落としてませんか?……あれ楠田だったんだ」
落としたしおりを拾ってくれたのはこの春から転校してきた松田君だった。
「ありがとう」
「うん、でもなんか渋いね、そのしおり」
「だよね……でも何だか捨てられなくて」
松田君にこのしおりを見つけた話をすると「なんかロマンはあるけど、結構年齢の高い人の物っぽいよね」
「そうだね……確かに」
「でも……その花見たことあるかも…俺、ここに引っ越して来る前住んでたとこかなり田舎だったから」
「是非本物見てみたいな」
「確かにキュウリの匂いは確認してみたいよな」
私の恋は終わったけれど、小さな花を見つけるために出かけてみよう。
了
✼あとがき✼
私の手元にはこのしおりがあります「キュウリグサ」
古本に入っていたのだから、気持ち悪いと捨てる人もいるかもしれませんが、何故か大切に使っています。
何処の誰が作った物なのかは分からないけどきっとその小さな花を残したいと思ったのであろう。
これからも大切にしていきたいと思っています。
押し花は少し色あせていますが手書きの花の名前とともにパウチされて小さなリボンも付けられております。
告白しますとこの作品は短編集の為に書いたものです。
(๑´ڡ`๑)♡テヘペロ
なので1話目とともに3月には短編集に格納いたします。
「お前!ゾロ目企画なのに何にも関連性ないやんけ!!!」
ごもっともでございます。
それがワタクシあいるでございます。
(仲良くしてくれてる人たちはよくご存知かと……)
これからもよろしくお願いします。
初めての自主企画これにて終了とさせて頂きます。
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