第31話【命の授業】

 不思議な夢を見ました、小さな男の子が出てくる夢でした。

 真っ白な着物を着た男の子が優しく「一緒に唱えて下さい」っていうのです。

 後ろには同じような着物を着たたくさんの子どもたちがいました。

 お経のような声が聞こえる中目が覚めた私はきっとその時に分かってしまっていたのだと思います。


 二人目を妊娠しているはずでしたが、最初こそつわりに悩まされていたけどこの1週間収まっていました。


 10週目の検診の当日の朝のことでした。


「残念ながら心拍がとまっていますね」


 やっぱりそうだったんだ、今朝の夢はそれを暗示していたのだと…


 その日のうちに処置をしました、麻酔が効きにくくて痛みは辛かったけど、人間が生まれてくるのがどんなに大変なのかをわかるには充分でした。


 母親に預けていた娘を迎えに行くと、小さな身体で抱きしめてくれました、その時に初めて涙が溢れてきました。


 悲しい経験をしたあとに数年後に妊娠がわかったときに嬉しさと同じくらい不安がありました。


 幸い、ちゃんと育ってくれてあの時抱きしめてくれた小さな娘をお姉ちゃんにしてあげることができました。


 妊娠も出産も女性ならだれでも出来ると思ってるかと思いますが、強く望んでも子宝に恵まれない人もいますし、不育症で悩んでる人もいます。

 あなたたちが生まれてきた意味を知ることがこの命の授業で伝えたいことです。


 ◇◇◇

 中学校の講演は「命の授業」だった、生きるのが辛くて悲しくて毎日のように命を終わらせることを考えていた私は途方に暮れた。


 生きてるって何?

 こんなに苦しいのに生きていなきゃだめなの?


 でも母さんの小さな後ろ姿が目に浮かんで涙が出てきた、会いたくなった。

「私…生きていていいんだ…」

ふとそう思った。




✿あとがき✿

親戚のお姉ちゃんに3度の流産を経験した人がいます、22歳で結婚して自然妊娠するものだと思ってたのに子宝に恵まれず、不妊治療へ

その後3度妊娠しても育たず「不育症」と診断されました。

辛い不妊治療もやめてからホッとしたのか自然に妊娠して今では二人の子どもの母親になりました。


この世に存在する限りはちゃんと生き抜かないといけませんよね。その思いで書きました。

読んで頂きありがとうございます。


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