第24話【トンカツ屋よしだ・後編】
和真がバイトをしようと思ったきっかけはその店のトンカツの美味しさなのだが
もう1つはレジの横に置かれた募金箱だった、身近な子どもたちに少しの温もりをとだけ書かれた透明の貯金箱。
それと外に張り出しているアルバイト募集の張り紙の横に「毎週木曜日5時~8時は0円です」
働き出して気がついたのだが、たまに面白がってくる客もいる、その客にも分け隔てなく料理を振る舞う。
しかしまわりの子どもたちやホームレスをみてその行為を恥じて料金を払おうとする客もいるのだが「今日は0円だからお釣りの用意してないから」とその料金を店主は受け取らない。
賛同してくれる人が増えて来ても身銭を切ることには変わらないのにこの店主の心意気に言葉にはしていないが和真は感動していた。
ある日の閉店後、店主は和真に声を掛けた「俺も歳を取った、あと何年この店を続けられるかわからない、もし嫌じゃなかったらこの店を引き継いでくれないか?」
この店の2階に住居はあり店主は1人で住んでいた。
恋愛も人並みに経験しているし、結婚を考えたこともあったのだが、人の縁とは難しいもので60の半ばを過ぎた今も1人者だった。
「僕なんかに大事な店を預けて大丈夫なんですか?まだトンカツなんか揚げれないし」
「それはこれからキッチリ教えるさ、俺には守るべき嫁も子どももいないからな、そして出来ることなら、この0円サービスだけは続けて欲しいんだ」
「少し考えさせてください」
和真の気持ちはほとんど決まっていたがその日はそう返事をした。
木曜日に冷やかしで来た客たちも通常の日に訪れてあの日の分だと言って募金箱に入れてくれる。
そんな優しさの連鎖は綺麗ごとばかりではないこの世の中に小さな名も無き花のようにひっそりと咲いている。
数日後「僕にトンカツを一から教えて下さい」
その言葉に店主は嬉しそうにうなづいた。
数年後には店の暖簾の名前もきっと「トンカツ屋やすかわ」に変わるだろう
そして毎週木曜日にはたくさんの「いただきます」が聞けるだろう。
その日の為に和真は今日も厳しくて優しい店主の修行を頑張っている。
おわり
✬あとがき✬
こんな世の中になって欲しいし、実践されている方もいます。その方たちに感謝とエールを送ります。
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