第13話【ちいさな恋のお話】
冬休みのある日、自転車に乗って信号待ちしていると急に肩を叩かれた
「おめかししてどこ行くねん?」
「あ、久しぶりやね、うん友達と梅田で待ち合わせてんねん、別におめかしとかしてへんし」
笑いながら答える
「しかしホンマにその自転車相変わらずボロいな、若くて可愛い女子が乗る自転車ではないわ」
「なんやねん!ほっといてんか!新しい自転車買う余裕なんかないわ」
彼とは高校の同級生
そして私の初恋の人なんだ
告白する勇気もなくてもうすぐ卒業を迎える
彼には彼女がいる、それにスゴく可愛い彼女なんだ。
告白したって悲しいだけだ…
毎年の体育祭で話題になる彼は軽音楽部なのに運動神経抜群
クラブ対抗リレーで並みいる運動系クラブを相手にダントツの走りを見せる彼だけど軽音楽部所属
彼以外が残念な走りをするから優勝はしないけどね。
その足の速さや運動能力の高さに陸上部を始め数々のクラブが勧誘したけれど「俺音楽が好きだから、ギター極めたい」と撃沈させていたっけ。
それぞれの部活がかっこいいユニフォームで走るなか制服のまま走るのは文化系の部活だけ、そりゃ目立つよね
文化祭のライブだってめちゃくちゃカッコイイもん。
いつも目で追うことが多くなっていた。
そしていつもその隣には、あさみちゃんがいる、公認の二人の仲になんて、入る隙間なんてないんだ。
告白する勇気なんてあるはずなかった。
今日もきっと彼女とのデートだろう
私は自転車を降りて彼と話しながら歩いた。
志望する大学に入っても彼とあさみちゃんはこれからも愛を貫くのだろう。
「あさみちゃんとは同じ大学に行くん?」
「えー?お前その話はすでに終わってんで、3ヶ月前ににフラレて俺は悲しきぼっちやで、しかもあさみには別の高校に新しい彼氏おるしホンマに笑けんで」
「ごめん知らんかったわ」
「なんやねん、何がオモロいねん、なんでワロてるねん」
「あ~なんや可哀想にって思っただけやん、情報上書き保存しとくわ、あのさぁ、暇なら今度映画に付き合ってくれへん?ぼっち同士で…暇やろ?」
「暇で悪かったな!何の映画?お前彼氏とかおらへんの?」
「すみませんね、高校に入ってから今まで彼氏がいた事ありません」
「なにドヤッてんねん、ホンマか、仕方ないから付き合ってやるわ」
「ありがと、また日にち決めよLINEするし」
その彼を残して自転車のペダルを踏んだ。
鼻歌混じりに自転車を漕ぐ
ボロい自転車で走る
今度こそ思いを伝えたいな…
アイツのライブにも行きたいな…
ちいさな恋のはじまりは……
❋✾❋あとがき❋✾❋
大阪弁丸出しの物語を書きたかったのです、モデルとなったのは信号待ちにボロい自転車に乗った女の子と同級生らしき男子
ほとんどその会話でした。
そして懐かしい高校生時代を思いながら書きました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます