第11話【物語のエンディング②】

「まぁいつものように綺麗なお花畑」

 娘は恋をしていたのです、同じ村の農民の息子である若者に恋焦がれておりました。


 しかし娘の父親は村で随一の権力者です、大きな屋敷を持つ染物問屋の父親が二人を許すはずがなく、いつからか外へ出ることも禁じておりました。


「あのお方は来て下さるかしら」


 父親が商いで隣の村へ出向いた折にはこっそりと二人が出会ったこの場所に来ていたのです。


「はる様」


 遠くから愛しいお方の声が聞こえて来ました。


「会いたかった!」

 そう声をかけたかと思うと大きな両手で私を包んで下さいました。

「私も貴方のことを思わぬ日はごさいませんでした」


 二人は半月ぶりに会えた喜びに暫く抱き合っておりました。

 慎太郎様は毎日この花畑に来ていたそうです。


「はる様、実はお願いがあって今日は伺いました、この運命に抗うすべがあるとある人に聞いたのです」

「それはどなたですか?」

「名前は名乗らかったのですが、次の世界から来たのだと言う不思議なお方でした」


 その方が言われることには、そこには自由があり身分も関係なく好きな者同士が夫婦になれるというのです


 はるには年が明けたら祝言をあげるという許嫁がおりました、父親の商いを後押しする大事なお方の跡取りとなる息子さまです。


「そこへ行けば、慎太郎さま貴方と夫婦になれるのですか、それならば一緒に参ります、どうぞ連れて行って下さい。それほどまでにお慕い申しております」



 私の頭にその記憶が蘇ってきた、慎太郎さまに会うためにその世界にやって来たのです。

 しかし会うことができずに、毎日を過ごしてきたのです。

 未来の国からの使者は言いました。

「会えるかどうかはお互いの思いが本物だった時だけです、会えなくなることすらあるかもしれない、それでよければ…お連れしますよ」

 そう言われても私と慎太郎様の決心揺るぎませんでした、そして次の場所へと旅立っていたのです。



 1つ目の扉を明けた時にその昔愛する人との逢瀬の場所だった花畑が目の前に現れました、懐かしく思いましたが、そこへ戻ってあの方にもう一度会えるとしてもその世界で夫婦になれるはずがありません。

 静かに扉を閉じました。



 もう一度その扉を開くと今度は青い空と白い砂浜の綺麗な風景が目に飛び込んできました。

 その日に焼けた砂の上に私は足を踏み出しました。



 そして、そこには愛しいお方がいました。

 海を眺めている後ろ姿ですぐにわかりました。


「慎太郎さま!」

 大きな声で愛しい人の名前を呼びました。


「はる様、お逢いしたかった…夢ではないのですね」

「慎太郎さま、ほんとに慎太郎さまですね」


 優しいさざなみの聞こえるこの場所はいつの時代かわかりません、でも好きな方と一緒にいられるなら何処でもよいのです。


 二人は固く抱き合いながら寄せては返す白い波を見つめていました。





 そして遠くからその姿を見つめている二人の影が見えました。

 きっとその二人も姫と勇者としてではなくて愛し合う者同士として愛を貫く場所を探していることなのでしょう。



 TheEND


 ❈どちらのエンディングがお好みでしょうか?

 どちらも好かん?……そっとフォローを外して頂いてもかまいませんよ( ´ •̥ ̫ •̥ ` )


 去るものは無理して追いませぬ。


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