第3話【ただいま絶賛連敗中】


 私の何が悪いのだろうか?

 顔はブサイクではない、というか上の方だと思う。

 学生時代にはキャンパスクイーンに選ばれたし、歩けばナンパされるのは当たり前…(但し数年前まで)

 何度も告白されて、そのうちの何人かとは交際した。

 プロポーズを受けたこともある、しかし踏み切れずに今年とうとうまえやくの歳になる。


 こんな夜更けにおひとりさまで牛丼屋にいるのは何故なのだろう。

 どこで間違えたのだろう?

 20歳の頃思い描いた未来とはまったく別の人生を今生きている。


 定期的に参加する婚活パーティー

 毎回、何人かとは話が盛り上がるのだか、最終的には誰からもアプローチはない。


 そして昨日も同じ結果だった、しかしこうなることは日曜日の夕方には分かっていたのだ。


 おひとりさまの休日は引きこもることが多い、悲しいかなテレビかスマホが話し相手なのだ。


「アカン、アカンその男はアカンて!!やめとき!」


 ドラマを観てはダメ出しをし


 感動の話を観れば、鼻水をすする


 おひとりさまの夜はそうやって更けてゆく。

 もはや恋愛占いは信用していない、私が占うのはサザエさんの番組最後のジャンケンのみだ

 つけっぱなしのテレビから流れてくるサザエさんの声に慌ててこんしんのグーを出す。


 また負けた━━━━━!!!

 今年に入ってから絶賛連敗中である。

 婚活パーティーと同じだった。


 ことごとくあのヘンテコな髪型の主婦に負けている、良くてもアイコだ。



 だから、今週末の婚活パーティーもさんたんたる結果になることは想定内である。



 そして残業帰りの今夜、行きつけの松屋に立ち寄る。

 飲み会の帰りはミニを選択するが、すでにお腹はペコペコだ、お金を入れて並盛のボタンを…押す

 その時にスマホを落とした…慌てて拾うと、「並盛のボタン押しますよ」後ろから声が掛かる。

「はい、すみません」

 振り向くと背の高いサラリーマンが笑いながら立っていた。


「あ、ありがとうございます」

 会釈してチケットとおつりを取り席に着く、ボタンを押してくれた人は椅子を1つ挟んだ右横に座る。


「つゆだくで!」

「つゆだくで!」

 チケットを取りに来た店員に同時に声を掛ける。


 え━━━━━っ!シンクロした?


 こちらを見て微笑むサラリーマン


 なんだかドキドキした、恋愛映画によくある、図書館で同じ本に手をかけて恋に発展するヤツなんちゃうか?

 脳内の私が囃し立てる

そんなわけないやろ、ここは牛丼屋やで!


その脳内の自分にツッコミを入れる。


 イヤないわぁー

 こんな牛丼屋で始まる恋なんてないわぁー


 しかし頭の中の妄想は自由だ…


 独身なんだろうか?

 そこそこイケメンやし、彼女はいてるやろなぁ


 妄想しながら食べるけど牛丼はふつうに美味しい。


 横目で見ると食べ終わってスマホを眺めているサラリーマン


 私も食べ終わり軽く会釈して店を出る。



 今夜の星はなんてこんなに綺麗なんだろう空を眺めながら歩きはじめると


 後ろから追いかけて来たサラリーマンが突然声をかけてきた。



「あの、良かったらLINEのID教えてもらえませんか」



「時々見かけていたんですよあなたのことを…」

「えっ?…あ…はい!」



家に帰ったら速攻で婚活パーティー断ろう。


 足取りは軽く鼻歌交じりに歩く三十路の女に満天の星はエールを送っていた。




✣先輩Aさんに捧ぐ物語です。ガンバレ

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