第11話 あなた

あなたと会う5日前、あなたからようやくLINEが来ました。

「最近忙しすぎる」と。


忙しい人は好きです。私の家は中流階級だけれど、祖父母がどちらとも裕福であったため、お金に不自由したことはありません。

社会人の年齢で暇をされていると少し心配になります。

あの人は暇をしているわけではないけれど、きっと普通の社会人ではないから、私はあの人の経済面を心配しています。



あなたは忙しすぎるのかもしれません。

きちんと会社に入ってるから紛れているだけで、あなたもあの人と同じまた夢追い人ではありますね。

サウンドクリエイターなんて言葉はあなたから初めて聞きました。


サウンドクリエイターも芸人も、正直言ったら不安です。

私は普通のサラリーマンと付き合いたいのです。欲を言えば安定した収入を持ち、小娘に一銭も出させないようなサラリーマンと。



ふと、あの人に伝えました。「ちゃんとLINEのやりとりしてくれるのが、私のことが好きみたいで嬉しい」と。

あの人は、「そう思ってくれて嬉しい、好きだから」と。

冷静に考えて、6つ下の小娘にお熱になるあの人はやはりちょっとおかしいのかもしれません。そういう風に思いつつ、あの人のことが気になって仕方がないわたしもまたおかしいのです。


あの人には、あなたに会うことを伝えてあります。

あなたは忙しさにかまけてもしかしたら会わないつもりなのかもしれないけれど。


あなたとあの人を考えていると、「二兎追うものは一兎も得ず」という言葉が浮かんできます。

きっと、あなたのこともあの人のことも手に入らないような気さえしてきます。


あなたは私にどれだけの時間と労力を割いてくれるのでしょうか。

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