第8話 あの人

電話をした時、あの人にも、私が人を好きになるのは「崖に立って上から下を見てみたい、と思うのと同じ」と言いました。


この人は何も分かってくれませんでした。


「好きだなと思う人は、一緒にいてドキドキするよ」と教えてくれました。

たしかに、高校の時の彼と一緒にいるときはドキドキしていました。



「かわいいって思ってもらいたいのって、好きってこと?」

「そういう好きもあると思うよ」



この人はたくさん好きの形を教えてくれました。

私はいまいちピンと来ません。


この人のことはどうなのでしょう。

私がたまにこの人の言葉で胸が高鳴るのは、崖から下を見下ろす、あのドキドキと同じな気がします。


好きなのでしょうか、これは。

まだ見ぬこの人のことが。



あの人からLINEが来ることが楽しみになっていました。

あなたからはいきなり来なくなりました。

でも、あなたに重きを置くのを止めようと決意していたので、深く傷つくことはありませんでした。


あの人に素直にならないことが好きです。

あの人に意地悪を言うのが好きです。


呆れたように、少し怒りますが、私がぶりっこして謝ると簡単に許します。

兄と会話するような感じなのでしょうか。



明日、あの人と上野で会います。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る