第6話 あの人
10月の半ば、あの人と会うことが決まりました。
あなたとはその次の週に会います。
私はあの人と電話する頻度がとても多く、ほぼ毎日声を聞いて、話をしてはお互いに笑っていました。
社会人のあの人の負担にならないか心配していました。
今日も、声が聞きたいのです。
あの人がLINEのやりとりが苦手なことは知っています。LINEをあまり見ないことも、意図的に見ていないことも知っています。
一度、「だからまだ結婚できてないんだ」とふざけて言うと、「それとこれとは関係ないでしょ」と笑われてしまいました。
私は、用がなくてもあの人と話がしたいのです。
あの人と話す時、私はあまり素直にはなれません。何と言って良いのか分からず、何もLINEを送ることはできませんでした。
いつも電話は23時にします。24時半には切ろうとします。
今は22時半。
あの人から気まぐれに「話す?」とラインが来ることを祈りながら、気休めに録画した映画を流し見します。
内容が頭に入ってこないのは、映画がつまらないのか、あの人のことをたくさん考えてしまうのか分かりません。
あなたのことを考えないようにする代わりに、あの人が私の頭を支配するようになりました。
あの人もきっと私の容姿をあれこれ考えているのでしょう。
私もあの人の容姿をあれこれ考えます。
写真より太っているのではないか、とか。
写真は別人なのではないか、とか。
そうやって杞憂する時間は、私の人生で一番無駄な時間なような気がします。
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