第5話 彼

色んな意味で、彼は特別でした。

彼もまた、あなたと同様に私の知らない世界を知っている人でした。

頭が良くて、背が高くて、実家も裕福でした。

顔は塩顔より薄く、無味無臭という言葉がぴったりなほど薄い顔でした。


自分より学歴が上なのは高校の時の彼だけです。

自分よりアホな男の人の前で「知らなかった」「そうなんだ」と言うことにも疲れました。

無意識に学歴で人を見下していたのだと思います。人を本質で見ずに上辺だけをみて理解しようとしていたのだと思います。

とても浅はかだと思っています。


でも、あの無意味なように思える空っぽな2年間は有意義でした。

今でも恋愛に夢を見ていますが、それと同時に、私は自分にも他人にも期待していません。

あの空っぽな2年間が自他共に期待しないことを教えてくれました。

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