第2話 彼
私がおかしくなったのは、間違いなく高校生の時の恋愛が原因だと分かっています。
あの当時、私は恋に固執していました。
彼のすべての関心が一心に私に集まっていないと嫌でした。
今では分かります。彼が好きと言うより、彼に注目されたいだけだったのです。
大学進学を機に、別れを告げられました。
私はもちろん気持ちを引きずり、恋愛に関して、2年間はもぬけの殻でした。その間付き合った人もいるけれど、長くは続かず、記憶にも残りませんでした。
21歳になって、誕生日の次の日、なぜだか高校生の時に付き合っていたその彼と夜ご飯を一緒に食べました。
夏の暑さも和らいだ夜、大森の賑やかな駅前から少し外れたところでした。
何も変わっていませんでした。好きだったあの頃と。
違うのは、学ランを着ていないということだけ。
初めてビールを飲みました。
初めて彼が酔ったところを見ました。
「今の彼女は存在が可愛い」
その一言で、私は夢から醒めました。
何か勘違いしていたのです。
しばらくしたから、また付き合えるのかもしれないと。能天気でした。
彼もまた能天気でした。
そして、残酷でした。
大森を出て、大井町まで二人で歩き、別れ際に
「今日おしゃれしてきたんだね。可愛いと思ってたよ」
そう言われ、私の心はかき乱されました。
家に帰り、少し涙したあと、私は出会い系アプリを入れました。
最早やけくそでした。
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