崖から下を見る

加々美

あの人に会うまで

第1話 私

あなたと付き合いたいと思うのは「崖に立ってちょっと下を見たくなるような気持ちと同じ」と言われました。

私の好きはみんなの「好き」ではないそうです。


画面越しのあなた。声は聞いたことはあるけれど、まだ見ぬあなた。

あなたは私の5つ上。私とは全く違う人。

考え方も、生き方も、好きなものも全部違う。そんなあなたに強く惹かれるのは、やっぱり崖に立って下に吸い込まれるあの感覚と同じなのでしょうか。


私はあなたに会いたい。

あなたがどんな人であれ、私を受け入れてくれるのならあなたに会って下心を抑えた会話がしたい。


あなたに私の白波のような気持ちがわかるのでしょうか。打ち寄せた波の消えゆく泡を心配する私の気持ちが。



あなたとのやりとりは神経が削られます。

私はあなたにしがみついているのを悟られないように、必死にそれとない返事をします。



あなたへの愛が氾濫しそうになる前に、あの人を好きだと思うことにしました。

そう思えば思うほど、あなたへの重い気持ちが深く深く沈んでいきます。


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