《Side:鈴木杏南1》
私がこの世界に来て2年以上になる。地球では50日程経っている頃。私はこの世界で2回誕生日を迎えた事になる。今じゃ19歳だ。
今は冒険者をやっている。報酬は、今お世話になっている孤児院に入れている。孤児院の人達には感謝している。この街に来てから1人だった私を住まわせてくれている。
私は街で知り合ったパーティーに自分も入れてもらった。けど、今日パーティーの仲間にパーティーから抜けるよう言われた。
何故私がこんな目に会わなきゃ行けないの!誰か教えてよ!
◆50日前
私は高校2年。大学への進学の為に塾に通う毎日。両親には親が望む大学に入るよう強制された。両親に逆らった事は一度もない。私にとって毎日はただ同じ事を繰り返すだけの退屈な生活。
そんな私にとって唯一楽しみだったのが親に隠れて観る息抜きのアニメだった。
非日常のそれが私を唯一楽しませてくれた。でも、その息抜きも両親に見つかり止められた。
その日初めて親に反抗した。他の何が出来なくてもそれだけは許せなかった。
私には大好きなアニメがあった。綺麗な女の子が聖女様と呼ばれて周りの人達を誰1人見捨てないで助けていく。
私はそのアニメを観て周りの人を助けられる人になりたいと思った。だから、私の目標でもあるそのアニメが観れなくなるなんて我慢出来なかった。
初めて反抗した私に両親は驚いていたけど、私が泣きながら反抗を続けると、毎日1時間だけ観ていいと言われた。
そんなある日、母が死んだ。
車に跳ねられて即死だったらしい。父から連絡を貰った私は何も理解できなかった。いや、理解したくなかった。
病院に駆けつけた私を迎えたのは泣き崩れる父と妹を支える兄。そして、横になったまま全く動くこともない母の姿だった。
どうして母が死ななきゃ行けなかったのか?そんな疑問が私の中に溢れていた。
最愛の妻を失った父。まだ小学生にもなってない幼い妹。大学生で家にはいないがしっかり者の兄。
その日から私達の生活は一変した。
父は毎日お酒を呑むようになった。酔っ払うと母の遺影の前で泣いていた。
妹はいなくなった母を求め毎晩泣いていた。
兄は家に戻り、私や妹の面倒をみながらバイトと大学に行くようになった。
私は、兄に勉強を頑張るよう言われた。私が大学に行き、いい仕事について、いずれ結婚する。それが母の夢だったから。
母は母子家庭だったらしい。そんな祖母も母が高校生の時に亡くなったらしい。父と結婚するまでは苦労の毎日だったらしい。自分と同じような苦労をさせたくない。
そんな母の夢。ある日、兄が珍しく酔っ払ってしまった母から聞いたらしい。兄に話を聞いた日はベッドで泣き崩れた。
その翌日から私は自分の意志で勉強を頑張った。大好きなアニメも観るのを止めた。
残された家族で支えあいながら頑張る私達。
そんな時、私は不思議な夢をみた。
ガラスに映る姿は私のまま見たこともない街にいた。夢だと思った。
私はただ街の中を歩いてみた。街の中は不思議な物だらけだった。街の中を歩く人の中には剣を持っている人がいた。他の人とは見た目が違う人がいた。そして魔法を使う人がいた。
私は何をやっているんだろう。母の夢の為に。家族の為に。頑張らなきゃいけないのにこんな夢をみている。
なんて呑気な夢なんだろう。街の中で笑う人達をみてそう思った。
母が死んでから私は頑張ってきた。でも、それが本当に私の意志なのか分からなくなっていた。
なら、夢の中ぐらい自由にしてもいいんじゃないか?そう思った私は周りの人に話しかけた。
夢の中なのに私の知らない事を知っている人達。
この夢の世界には、5つの種族がいることを知った。私が話を聞いた人は変な人をみるように私をみていた。自分の夢なのに泣きそうだった。
それでも、教えてくれた人によると、この夢の世界には人族、魔人族、エルフ族、小人族、獣人族がいて別々の大陸に住んでいる事がわかった。
街にいる獣の耳と尻尾を生やした人達が獣人族らしい。この街にいる獣人族が全員奴隷だと聞いた時は凄く悲しかった。
自分がそんな夢をみるなんて。そう思った。
以前みていたアニメ、その中の聖女様。彼女みたいになりたいと思っていた私がそんな夢をみるなんてと泣きそうになった。
結局、私にはそんな資格がなかったんだろう。母も助けられない私には。
他にもこんな事を聞いた。この夢の世界には神様がいると信じられていた。何でも昔、実際に神様が現れた事があるらしい。
ここはガルンの街。この街には、昔現れた5人の神様を奉る教会があることを聞いた私は教会を訪れていた。
夢の中とはいえ、神様がいると信じられているなら母の冥福と家族の安全を祈ってみようと思ったのだ。
教会に入ると修道女と呼ばれる女性が話しかけて来た。私は祈りに来た事を伝え中に入れてもらう。
正面には5体の銅像があった。これが神様達なんだろう。私は銅像に手を合わせ、教会を後にする。教会を出ようとしたとき教会への寄付を求められた。
夢の世界のお金を持ってない私は修道女に持っていない、そう伝えた。すると凄く嫌な顔をされた。凄く悲しくなった。
別に私はお金にがめつい女じゃない!そんな事を考えていると小さな子供達の声が聞こえてきた。
子供達の声がする方に行くと、あまり綺麗とは言えない建物があった。そこで子供達が遊んでいた。
私が子供達を見ている中から女性が2人出てきた。1人は私と同い年位の女性。もう1人は少し母に似た中年の女性。
2人はここで何をしているのか聞いてきた。私が子供達をみていたと言うと中に案内してくれた。
話をしていると中年の女性が話しかけて来た。親は何処にいるのか。住む場所はあるのか。どうやらここは孤児院らしい。
女性に声をかけられた私は母を思い出し泣いてしまった。夢の中なのに涙が止まらない。
泣いている私をみて中年の女性がここに住むように言ってきた。もう1人の女性も頷いている。彼女は私より2つ上の19歳らしい。
2人の優しさに私はまた泣いてしまった。私を優しく抱きしめてくれる中年の女性に、幼い頃に抱きしめてくれた母を思い出す。
それから私はここで暮らし始めた。夢の中なのにいつまでも目覚めない事など毎日が楽しくてどうでも良かった。
中年の女性と若い女性を母や姉のように慕い、妹と同い年位の子供達と遊んだりしながら面倒を一緒にみているうちにこの夢の世界では1年以上が過ぎていた。
そして、神様から精神だけが異世界に呼び出された事を聞いた。
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