《面倒くさい女性》

クレアさんの言葉を聞いた彼女が俺にそう聞いてくる。なんて答えよう。まだ彼女が俺が探してる転移者なのかもわからない。ここは安全にいこう。


「ハンバーグを考えたのはアンナさんですか?」


まずは料理の事を聞いてみる。


「そうですけど。それが理由ですか?あ、もしかしてハンバーグの作り方を知りたいんですか?」


俺がハンバーグの事を聞くと自分が考えた事を教えてくれた。どうやら間違いなく考えた本人らしい。なら、


「いや、どうやってハンバーグを思いついたのかなって気になったので!」


話をはぐらかしながら聞いてみるも、


「え?いや、私は料理が好きなんで。」


なんて言われてしまった。確かに料理が好きな人とかなら考えられる料理か。なら、名前は?


「じゃあ、なんでハンバーグって名前なんですか?」


そう聞いてみると、


「あの。逆に何でそんな事を聞くんですか?」


そう言われてしまった。何故か受付で聞き耳をたててるクレアさんも不思議そうに頷いてる。まずいな。なんて答えよう!


よし。もう回りくどいのはやめよう。直球勝負だ!


「もういいです。誤魔化すのはやめてアンナさんに聞きたい事があります。」


俺は彼女の目を真っ直ぐ見る


「え?は、はい。」


突然の事に驚くアンナさんだが俺の目を見て答えてくれた。


こんな場所じゃアルティアの事なんて聞けない。場所を移すように言っても付いて来ないだろう。


俺は考える。彼女が転移者だとしても他の世界の人間なら、地球の事はわからない。


もし、地球からだとして他の国の人なら?俺には他の国の事なんてわからない。なら地球の人ならわかる事だ。単純にすぐ理解出来る言葉。なら、


「アンナさん。地球って言葉は知ってる?」


俺は彼女に言ってみた。すると、


「え?」


俺の顔を見たまま、そう声をもらして止まってしまった。


あれ、間違えた?やっぱり、ただの人族の女性なのか?


俺がそんな事を考えていると俺の顔を見て止まっていたアンナさんが急に泣き出す。


「え?なに?どうしたの?ケント君、あなた何かしたの?」


クレアさんが突然泣き出したアンナさんの所に来てそんな事を言う。そんな事を俺に言われても困る。俺だって急に泣き出すなんて思ってなかった。


「い、いや。俺は何にもしてないですよ?質問してただけで。アンナさん、大丈夫ですか?あ、あの泣き止んで下さい!」


俺は彼女に声をかける。クレアさんもどうにか落ち着かせようとする。今、ギルド内の視線は俺達に集中している。


人族の女性を泣かせる獣人族。他の人が見たなら俺の立場が危ないだろう。だが、ここはギルドの中。俺が何もしてないのは皆わかっている。


彼女のこの反応は間違いなく地球を知ってるって事だろう。だが、何故泣いてるのかが分かんない。


「あ、あの。アンナさん、とりあえず場所を移動して話しませんか?ギルドの外にでも。」


俺がそう提案するとアンナさんは泣きながらも何度も頷く。


クレアさんは突然の俺の提案に驚くが彼女が何度も頷くのを見て何も言わないでくれる。


俺が彼女を連れてギルドを出ると外はすっかり日も落ちて暗くなっていた。街の明かりが所々にあるが、この街には街灯が少ない。多分、あれは魔石を使った魔道具なんだろう。どういう原理で夜にだけ明かりがつくのかはわかんないが。


とにかく、こんな暗い中だと落ち着いて話もできない。


「あ、あの。とりあえず宿に移動して話をしませんか?」


彼女にそう聞いてみると泣きながらも頷いてくれる。


「なら、アンナさんが暮らしてる宿にでも行きませんか?そちらの方が安心でしょうし。」


俺がそう言うと彼女は泣きながらもやっぱり頷いてくれる。


「なら、案内をお願いします!」


俺がそう言うと頷いてくれるアンナさん。だが動かない。


「あ、あの。アンナさん?宿に案内をお願いしますね?」


だが、やっぱり頷くだけで一歩も動かない。とにかく凄い泣いている。


う~ん。なんか凄く面倒くさいぞこの人?どうしようかな?


「あ、あの。じゃあ、とりあえず俺が止まっている宿に行きますか?」


やっぱり頷くだけのアンナさん。とにかく移動したい俺は彼女の手を引いて月の恵に行く。


宿に行く途中はあまり人がいなかった。路地にある酒場とかからは声だけが聞こえてくる。


やがて、宿に着くと中に入ってきた俺に店主のアイナさんが声をかけてくる。


「あら、おかえりなさい。今日は随分遅かったわね?」


そう言って出迎えてくれるアイナさんだが俺が連れてるアンナさんを見ると、


「あら、新しいお連れさん?。泣いているようだけど何かしたんじゃないでしょうね?」


そう言って俺を睨んでくる。こ、こわい。


「い、いや。違いますよ?彼女は知り合いみたいなもので。ね?ア、アンナさん。」


俺は声をうわずらせながらアンナさんに同意を求める。頷いてくるアンナさん。


「そうなの?なら、いいわ。」


アンナさんが頷くと睨むのをやめてくれる。


「じゃ、じゃあ彼女の部屋を用意してくれますか?一泊でいいので。」


俺はそう言って銀貨5枚を払う。


「了解。はい、カギ。部屋はハンナちゃんがいた部屋ね。」


そう言ってカギを渡してくれる。俺達が2階に上がろうとすると繋いだ手を見てにやつきながら、


「しかし。あんたもハンナちゃんが居なくなった日に別の女を宿に連れ込むなんてね!可愛い顔してやるじゃないか!きっとハンナちゃんが見たら怒るわね!」


そんな事を言ってきた。


「い、いや。連れ込むなんてそんなのじゃないですよ?それにハンナは友達ですし、例え連れ込んでも怒りはしないですよ!」


俺がそう言うと、意外そうな顔をして、


「そうなの?結構良い雰囲気だったけど?」


そんな意味のわからない事を言ってくる。いや、ハンナはただの友達だ。


「とにかく、ハンナとは友達なだけなので!」


俺はそう言ってアンナさんを連れて2階に上がる。ちなみに、この会話の間もアンナさんは泣き続けている。


とりあえず話をするためアンナさんを彼女の部屋に案内して、ベッドに座らせる。俺はその前に立って声をかける。


「さて、まずはちゃんと話をしませんか?」


俺が声をかけると泣きながらも俺の方を見てくれる!


「じゃあ、まずは自己紹介から。俺の名前は、佐藤剣斗。17歳の日本人です。あなたも地球の人ですよね?」


俺が自己紹介をすると、更に泣き出すアンナさん。泣きすぎてえずいている。


とりあえず、えずくアンナさんの背中を擦ってあげ、声をかける。


「ちょっと、下に言って水でも貰ってきますね?」


そう言って部屋を出た俺は下に降りて水を貰いにいく。俺が水を貰って部屋に戻るとアンナさんは泣きつかれたのか眠ってしまっていた。


「マジか。しょうがない。今は寝かせて話は明日にするか。」


俺は眠る彼女を見ながらそう呟いて部屋を出る。


何か終始、泣いてただけの人だったな!

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