《Side:鈴木杏南2》
神様。アルティアと言うらしい。
彼女は、自分がこの世界、アルティミアに呼んだという。他の4人の神様と協力して。
意味が分からなかった。私はただ夢をみているだけのはず。でも、不思議と彼女の言う事が嘘じゃないと感じた。
何故なのかは分からないが私達の精神が戻せなくなってしまったと言う彼女。地球では私達の体は眠り続けていると言っていた。
私が地球から呼んだ最初の人間だったらしい。私は呼ばれてすぐに目を覚まさなくなっていたらしい。それに気が付くまで1ヶ月もかかったと言われた。
私は許せなかった。夢ならいつかは覚めると思ってた。でも違った。
地球ではきっと私の家族が目を覚まさない私の事を心配している。母が死んでからまだ一年も経っていない。なのに私がそんな事になったら家族がどうなってしまうのか心配だった。私はどうにか今すぐ地球に戻せないか問い詰めた。
でも、アルティアはただ戻せない。何の反省もしてないような声でそう言った。私はただ絶句するしかなかった。
それからは何を言われても黙って聞くことしか出来なかった。
自分達が原因を突き止めるまでは、ただアルティミアの発展の為に知識を生かせ。他は何もしなくていい。そんな理不尽な事を言う。
話も終わり、アルティアが私に何でも望み通りの力をくれる。そんな事を言った。正直、そんな力は要らないから地球に戻して欲しかった。
でも、それは出来ない。なら、私は人を癒せる力を望んだ。この世界には回復魔法がある。
私がお世話になっている孤児院には病気にかかっている子供もいる。お金がなく治療もしてやれない。そう言って中年の女性、リザさんが泣いているのを見た事がある。
私が回復魔法を使えれば子供達の怪我や病気を治してあげられる。リザさんの力になってあげられる、そう思った。
家族の事はもちろん心配。でも、今は戻れないなら新しい家族の為に頑張ろう。
力をくれたアルティアに1つだけ質問した。何故、神が用意した体が元の世界と同じ見た目なのか聞いてみた。
神様達は元の体を参考にして、この体を作ったと言う事だった。違いは種族の特徴がある事と体型に少しの誤差があるだけとの事だった。
私は自分の胸を見た。正直、小さい。元の体はもう少し大きかった。
ふと、私は教会で見た神様達の銅像を思い出した。全員、凄く小さかった。自分達が小さいから大きいのは作りたくなかったんじゃないか?そう言ったら凄い怒られた。凄く怖かった。そして凄く泣いた。
やがて、アルティアは話を終えて他の人にも説明をすると言って頭の中から消えた。
私は孤児院に戻ることにした。私が孤児院に向かっていると、魔人族の男性が1人でいるのを見かけた。
魔人族と人族の人は仲が悪いらしい。たまに揉めているのを見ることがあった。
私は仲が悪いならこの大陸に来なければ良いのにと思った。
周りに誰もいない場所で1人でいる魔人族の男性。男性はただ黙って立っているだけだった。
私が少し不思議に思い見ていると男性がふざけるなと、突然声を荒げる。私は凄いビックリした。でも、次の言葉で彼の正体に気がついた。元の世界に戻せ、そう言った。
目を閉じて再び黙り込んでしまった男性。アルティアと話をしているんだろう。
しばらくして目を開いた男性は、目を見開いている私を嫌そうに見て何処かに行け、消えろと怒鳴ってきた。
私は怖い気持ちを抑えて男性な話しかけた。話しかけて来た私に驚く男性だったけど、私が自分と同じく他の世界の人間だとわかると話をしてくれた。
自分は地球とは別の世界の人間で元の世界では研究者をやっていた事。研究に疲れて眠るとアルティミアに来ていたこと。
元の世界の色んな事を話してくれる男性と色んな話をした。男性の世界は地球と違ってロボットの様な物が人間と一緒に生活をしているという。私が地球について話すと黙って聞いていた。
研究者という事だし他の世界の事に興味があるのかなと思った私はこの世界の事を教えてあげた。
だけど、私がこの世界の事を話していると彼は何故そんなに知っているのか聞いてきた。
そして、私は話してしまった。既に1年以上この世界にいることを。
私の話を聞いている男性の顔が曇っていく。男性の表情に気が付かないまま私は既に1年以上いる事を話して男性を見た。
そして気が付く。男性の絶望したような表情を。彼はすぐにでも何とかなると思っていたようだった。アルティアとどんな話をしたのかは知らないけど彼は楽観視していたようだ。
やがて、私の話を聞いた男性が突然笑いだした。最初は周りに誰もいなかったけど、今は他にも人がいる。そのまま、大通りの方に歩いていく男性。
「ふふふ、わっはっはっはっは。そうだ、やっぱりこれは現実なんかじゃない‼️元の世界に戻るもなにも、これはただの夢ですよ。夢!あなたも私のただの想像だ。実際には、私は研究室で寝ているだけなんですよ!そうに決まってます。きっかけさえあれば目を覚ますはずです。」
これが男性の最後の言葉だった。高笑いをしながら歩いていく男性はそのまま道に飛び出してしまう。私は男性を追いかける。
その時、1台の馬車が通りかかる。男性に気が付いた馬車が止まる。よく見ると馬車の周りには数人の馬に乗った人がいた。
男性を取り囲んで、不敬罪だと言う人達。やがて、馬車から若い男性が降りてきた。すると、馬に乗っていた人達が馬から降りて敬礼をする。その間も高笑いを続けている男性。
ここまでくれば私でも分かる。この1年以上で沢山の事を知った。この世界には貴族と呼ばれる人達がいる。失礼な事をしたらどうなるか分からない、そんな人達。
馬車から降りてきたのは貴族の男性。周りの人はその護衛の騎士の人達だろう。
貴族が騎士から剣を受け取ると、そのまま男性の首を切り落とした。
あれ?あの人の名前を聞いてなかったな。
突然起きたあまりの出来事にそんな事を考えていると、貴族が男性を追いかけてきた私の事を見る。
血がベッタリ付いた剣を持って私の方に歩いてくる貴族。
私は気が付いたら逃げ出していた。騎士が私を追いかけてくるが、路地を使って撒いた。
騎士を撒いた私は孤児院に戻ろうかと思ったが思い直す。
私が戻ったら迷惑をかけるかも知れない。
そして、私はガルンの街を出た。他に頼れる人のいなかった私は以前、孤児院に来ていた隣街のランドにある孤児院の男性を頼る事にした。
街を飛び出してから4日、私はランドの街に着いた。道中は街の外で知り合った、ランドの街に行く冒険者に同行させて貰った。
彼等は私が貴族から逃げてきたと聞いても、自分達には関係ない事だと言って気にしなかった。
ランドの街に着いた私は孤児院を訪ねた。一度しか会っていないが私の事を覚えていた男性は話を聞いて心配してくれた。
ガルンの街の孤児院で、リザさんから私の事を聞いていた男性は私を受け入れてくれた。男性の名前はダントさんと言うらしい。
私が街に着いて数日、リザさんから手紙が届いた。ダントさんが私がランドにいる事を伝えに行ってくれたのだ。
ダントさんが受け取ってきたリザさんの手紙には私を心配する言葉が沢山書いてあった。
貴族とのトラブルについてはリザさんも話に聞いたらしく、詳細は何も知らないが孤児院の事は心配しなくて良いと書いてあった。私は手紙を読んだ後、ただ泣いていた。
私がこの街に来てから1年が経つ。既に19歳になる。私は今、冒険者をやっていた。
孤児院の方の運営が厳しくダントさんが困っていた為だ。孤児院がなくなれば子供達はスラムの住人になるしかない。
妹と同い年位の子供達をそんな目に遭わせたくなかった私は街で知り合った、冒険者のパーティーに入れて貰った。冒険者ならかなりのお金を稼げるからだ。
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