《冒険者登録:2》
うん。とりあえず上手くいったハズだ。
魔道具の起動にかかった時間は30秒程。これなら多分、騒ぎにはならないんじゃないかな?
「起動出来ましたね?では、ステータスを確認させて頂きます。」
そう言って俺から魔道具を受け取るクレアさん。
「では、確認します。ケントさんですね。レベルは32。魔力ランクは30秒程ですのでランクはCランクですね。獣人族の方でCランクはすごいですね!中級までなら何回も使えますよ!私が今まで会った獣人族の方の中で一番です。」
駄目だった!壊さなくても目立ってる。俺のステータスを見て興奮気味に言うクレアさん。
「あ、ごめんなさい!冒険者のステータスは基本、秘密なんでした。」
そう言って口をつぐむクレアさん。
俺は周りの様子を見てみる。どうやら別に誰にも気にされてないようだ。まあ、他の種族の人ならCランクなんて沢山いるだろうしな。
「いえ。大丈夫ですよ!でも、一応秘密でお願いします!」
「勿論です。誰にも言いません。」
そう言って口元にバッテンを作るクレアさん。少し可愛いな!
「それで?これで登録は終わりですか?」
俺がそう聞くとクレアさんは思い出したかのように
「すみません、まだでした。後、1つだけ。一応、戦闘能力を見るためにギルドの職員と模擬戦を行って頂きます。ギルドの裏にギルドの訓練場がありますので向かいますね!」
そう言って受付を開いて中に入れてくれる。中では、他の職員が机に座って仕事をしている。職員の間を通って裏に向かいながら歩いているとクレアさんが話しかけてくる。
「ケントさんて、獣人族の方なのに強そうですよね?今、何歳なんですか?」
「え?ああ、別にそんな強くないですよ?旅をしていたので少しは闘えますが師匠にあたる人物には歯が立ちません。それと、年は17歳です。」
これは本心だ!師匠ってのはボイナの事。彼女との模擬戦は竜形態でも人形態でも全く敵わなかった。俺がそうクレアさんに返すと、クレアさんは驚いた顔をする。
「え?まだ17歳なんですか?若いとは思ったけど本当に若いですね?確かゾーン大陸からイース大陸まででも、2年はかかりますよ?ってことはその頃はまだ15歳ぐらいですよね!」
そう言って驚いているクレアさん。え?2年もかかるの?
『本当にそんなかかるの?』
〈はい。事実です!エルフ族が住むノーブル大陸は1年。それ以外の大陸だと2年はかかります。仮にイース大陸から残りの全大陸を訪れるなら6年はかかります!〉
『マジかよ。じゃあ精神が戻らなければ、地球じゃ半年近くも経ってんのか?』
〈はい。ですが、それは何処にもよらず真っ直ぐ進んだ場合です。実際にはもっとかかるでしょう!〉
ハァ。マジかよ。え?そんなにかかるの?姫華姉さんの事も探さなきゃ行けないのに!早く地球に戻れるようにしろよアルティア!
まあ、俺が焦っても仕方がないか。死んで戻れなくなるよりは何年かかっても生き延びてやる!
「あの?話聞いてます?」
俺が決意固めているとクレアさんが顔を覗き込んでくる。
「え?なんですか?」
「ですから、何でそんな年で旅してるのかなって!」
「あ、ああ。それは獣人族の風習で15歳になると一人前になった証として最低2年間は大陸を出なきゃいけないんですよ!」
これはボイナから聞いた話だ。って言っても行くのはノーブル大陸らしいけど!まあ、それはクレアさんは知らないだろうし問題ない。
「でも、獣人族にとってイース大陸って来たくない所ですよね?何でわざわざ?」
「ただの意地ですよ!獣人族は人族を怖がらないって!」
これはボイナと考えた設定だ。中には同じ理由でイース大陸に入る獣人族がいるらしい。
俺がそう言うと、驚いたクレアさんだが笑って「頑張ってね」と言ってくれる。そして、俺達は訓練場に着く。
訓練場に着くと1人の男が剣を振っていた。クレアさんが男に声をかける。
「レイモンドさん。新しい登録の方を連れてきました!」
声をかけられたレイモンドがこちらに気がつく。年は5、60代ってどころか?強いな、この人。剣筋がかなり鋭かった。
「ケントさん。こちらは模擬戦担当のレイモンドさんです。」
「レイモンドだ。よろしくな獣人族の坊主。」
軽く挨拶をしてくる、レイモンド。少し気になったので鑑定を使ってみる!
{レイモンド。レベル70。ランクA。}
Aランク?職員なのに強すぎだろ!俺がランクに驚いているとレイモンドが声をかけてくる。
「今、俺に"
「え?」
「上位の冒険者になると"
そうなんだ。ボイナに鑑定を使ったのがバレた理由がわかった。
「レイモンドさんは元Aランクの冒険者なんですよ!今は引退されてギルドの職員をしているんです。」
クレアさんが説明してくれる。何で引退したんだろ?別に何か大きな傷があるわけではなさそうだし。
「レイモンドさんは何で引退を?」
「うん?いや、別に理由は大した事はない。Aランクにまでは何とか上がったが、そこまでが限界でな。もう、50歳も越えていたから引退したんだ。さて、話はここまでだ!模擬戦を始めるぞ。」
そう言って剣を構えるレイモンド。俺も剣を構える。
「じゃあ行くぞ。魔法が使えるなら使っていいぞ!何属性の魔法が使える?」
攻撃を仕掛けながら、そんな事を聞いてくる。
「火属性と光属性。後、無属性の魔法を使えます。"
俺は返事を返しながら火属性の初級攻撃魔法。"
「ふん!!」
飛んできた火の球を切り落とすレイモンド。その後も何度か火の球を放ちながら剣を交差させる。模擬戦を始めて10分程で、
「ここまでだ!」
剣を弾き飛ばされ、レイモンドの剣が俺の首に軽く触れる。
「戦闘能力はDランク位はありそうだな!ケントならFランクからはランクはすぐに上がるぞ。」
そう言って剣を収めるレイモンド。
今の模擬戦は上手く力を抑えて戦った。さすがにレベルの低い俺がレイモンドに勝つわけにはいかない。
「凄いですね。大体の新人の方は一瞬で終わってしまうんですよ!」
それでも驚いてくれるクレアさん。いい人だな!
模擬戦を終えた俺達は受付に戻る。
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