《ギルド到着》
商店街の人達から話を聞いた俺はギルドを目指して歩いていた。
場所は街の西側の大きな建物だという。商店街の人達と別れる際、ギルドについて少し聞いてみた。
ギルドでは冒険者の管理だけじゃなく商人や料理人等の管理もやっており、新しい物はギルドで登録するとの事。料理を考えた人の事もギルドで聞けるらしい。
ギルドに向かう途中、話を聞いた中で地球からの転移者が教えたであろう料理を見つけた俺は屋台のおじさんに声をかけてみる。
「すみません。その料理について教えて貰えませんか?」
俺が声をかけると一瞬だけ嫌そうな顔をするが、さすが商売人。すぐに表情を笑顔にかえて応対してくれる。
「なんだ獣人族の兄ちゃん。この料理を見るのは初めてか?これは俺様が考えた魔物の肉を細かくして練り上げて焼いた、はんばーぐって料理だ。うまいから食べてみるか?」
そう言ってハンバーグを差し出してくる。このおっさんが考えたってのは嘘だろうな。
歩きながら屋台を見てたが、売ってるのは固そうなパンや肉を焼いただけの串焼きなど、あまり料理の質が高そうには思えない。けど、この料理は他のと違って料理にかかる手間も質も段違いだ。
それにハンバーグって名前。地球の料理と同じ名前なのが偶然な訳がない。
「いえ、今は急ぐので!あそこに見える建物がギルドで良いんですよね?」
「なんだ。買わないのか?ああ、あれがギルドだよ!」
俺は料理を受けとるのを断りギルドへと向かう。
「意外とでかいな!」
ギルドの建物は俺が思ったよりでかい。2階建て大きな建物だ。
俺がギルドを見ていると後ろから来た奴等に押し飛ばされる。
「邪魔だ!獣人族がこんな場所にいるんじゃねえ!」
そう言ってギルドの中に入っていく男達。
「なんだアイツら。随分偉そうだな?」
俺は突然の事に驚きながらも気を取り戻してギルドに入っていく。
中に入ると視線が俺に集中した。
俺を見て嫌そうな顔をする奴、観察するような視線の奴、一瞬だけ見て興味をなくす奴。三者三様の反応だ。
俺が視線に驚いてると受付の方から怒鳴り声が聞こえてくる。
「何でこんな場所しかないのよ?こんな場所じゃ客が来ないじゃない!」
「そんな事を言われても場所がないんです。」そう言って申し訳なさそうに謝る受付の女性。
騒いでいるのは街の入り口で出会った兎人の少女だ。
「獣人族だからって差別してんじゃないでしょうね?」そう言って受付の女性を睨み付ける少女。
「いえ!ギルドに差別はありません。本当に場所がないんです!」
「もういいわよ!」そう言って怒りに身を任せてギルドを飛び出していく少女。
「相変わらず、気の強そうな子だな。」
俺が少女が飛び出していったギルドの入り口を見ていると受付の女性が声をかけてくる。
「そちらの方?ご用でしたらこちらの受付にどうぞ!」
笑顔で呼ぶ受付嬢に呼ばれ向かう。
「今日はどういったご用でしょうか?」そう言って聞いてくる女性に俺は先程の事を聞いてみる。
「あの、さっきの少女はどうしたんですか?」
俺がそう聞くと、女性は申し訳なさそうに
「彼女はお店の出店許可を貰いに来たんですけど店を出せる場所が少なくてスラム街の方になってしまって」
なるほど。確かに治安の悪そうな場所は客の入りも悪そうだ。それにしてもスラムなんてあるんだ。一応、気を付けておくか!
「なるほど。別に獣人族だからって訳ではないんですよね?」
俺がそう言うと女性は真面目な顔となり
「そんな事は絶対にありません。ギルドは大陸を越えて繋がる組織です。一緒に働く同僚に獣人族の方がいることもあります。だからギルドの職員は差別を絶対にしません。」
そう真剣に訴えてくる。
「そうなんですか。すみません軽率な発言でした!」
俺がそう言って頭を下げると、女性は少し驚き
「ふふ。大丈夫ですよ。恐らくギルドは初めてですよね?なら知らないのも仕方ありませんよ。それで?今日はギルドに登録ですか?剣を持っていますし、冒険者に登録ですか?」
そう言って笑顔で聞いてくる女性。
「えっと、聞きたいことがあったんですけど登録もお願い出来ますか?」
ギルドに登録するのは悩んでいたが、これなら登録しても問題はなさそうだ。
「わかりました。先に聞きたいことを教えて貰えますか?」
「はい。実は人を探してまして!ギルドでは商人や料理人等の管理もしているって聞いて、新しい物を作った際もギルドに登録されているんですよね?」
「はい。確かに管理はしていますよ?って言っても先程みたいに出店場所を提供するぐらいですが。新しい物ができた場合は同じような物が登録されていないか調べるだけで、もしなければ希望される場合は独占する事を許可しています。特許って奴ですね!探している人は商人ですか?」
そう説明してくれる女性。この世界にも特許ってあるんだな!
「いえ。冒険者の方ですね!知りたいのはハンバーグって料理を考えた人の事なんですが。」
「ああ、それなら分かりますよ!でも、今は依頼を受けて街を出ていますが知り合いですか?」
街を出てるのか?サポーターに確認しとけば良かった!
「いえ。知り合いではないんですが名前だけでも教えて貰えませんか?」
俺がそう言うと女性は困った顔になる。
「申し訳ありませんが知り合いでなければ、その人物について教えることは出来ません。」
そう言って軽く頭を下げる女性。
マジか。名前も分からないと探しようがないな。どうしよう。そんな気持ちが顔に出ていたのか女性が代案を出してくれる。
「もし、戻って来たなら伝えるぐらいなら大丈夫ですよ?何か事情もありそうですし。」
「本当ですか?お願いします!」
思わず受付に身を乗り出す!
「え、ええ。では戻って来たらお伝えすると言うことで!それで、冒険者に登録で良いんですよね?」
近づきすぎて女性が少し引いている。離れよう!
「はい。お願いします!」
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