第2話 オカッパのお節介
「ねえ、真理。あなたはあんなに動物に好かれるのですから、いいかげん人からも好かれる努力をしてくださいよ」
旧校舎に向かう途中、真理にそんな話をする。
「人に? なんで?」
キョトンとした表情を浮かべる真理。
「だって、嫌じゃないですか。他人から変な人だって言われるのは」
「べつに。私は私がしたいようにしてるだけだもん。人からの目を気にして自分のやりたいことができなくなるなんてもったいないでしょー」
強がりではない。彼女は本気でそう思っているのだ。
こんな性格だから、当然友人はいない。教室では腫れ物扱いされて誰も近づかないのだけれど、真理にとっては自分の好きにできるからとむしろ好意的に捉えている。
せめて、見た目だけでもちゃんと整えてくれたら、それだけでも周りからの評価は変わるのに。
「前から言っていますけど、寝癖くらい直したほうがいいですよ。毎朝整えるのが大変なら、少しくらい梳いてもらうだけでマシになりますよ」
「やーだ。一度手入れしはじめるとずっと気にしなきゃいけないでしょー。そんなの面倒だもん。髪型を気にする暇があるなら、花壇でアサガオ育てる方がよっぽど有意義だもん」
「手入れって。二ヶ月に一回、一時間ほど美容院に行けばすむ話です」
「それが面倒なの」
「一度でいいので行ってみましょう。私もついていきますから」
「いい、行かない。いらない」
心底うっとうしそうに、真理が首を横に振った。
その態度にちょっとムッとして、彼女の服装を否定する。
「じゃあ白衣を着るのをやめてください。この学校であなただけですよ、年中白衣を着ている学生なんて」
「いいじゃん、白衣。汚れてもいいし、動きやすいし。研究所とかだったら制服みたいなものだもん」
「ここは高校です。研究所ではありません」
「実用的なんだからいいじゃん。わたし理科部だもん。先生もいいって言ってたもん」
理科部だから、という理由で先生も許してくれていた。というより、言っても無駄だと諦めているのだ。
「あと、いい加減そのメガネをやめてください。そんな牛乳瓶の裏みたいな分厚い丸メガネ、つける必要ないじゃないですか」
真理は空を見上げ、鼻歌を口ずさむように、「いつも、いつも、うるさいなぁ、オカッパは」と言った。
「これはオカッパではありません。ボブヘアです」
「うるさいオカッパ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます