こんな夢を見た/始業式の朝
青葉台旭
1.
私(既に成人している)は、自慢のスポーツカーに乗って、故郷の田舎道を走っていた。
朝の田園風景は美しく、新鮮な空気を吸いながら景色を楽しみたいと思った私は、自動車を道端に停めて外に出た。
田舎の綺麗な空気を吸いながら農道や雑木林の中の道を歩くのは、とても気持ちが良かった。
歩きながら、ときどき愛用のカメラを覗いて、何ということもない田舎の風景を撮影した。
このまま夕方までカメラ片手にこの辺りを散策するか、と思った。
ふと前方の
F君は高校の制服を着て、学生鞄を持っていた。
まるで通学途中のような感じだった。
その時点で、私は、なぜか高校生に戻っていた。
私は、てっきり、まだ夏休みだと思っていたが、それは勘違いだった。
今日から学校が始まるのだと、通学途中のF君に会って気づいた。
時計を見ると七時半だった。
大急ぎで家に帰って支度をしないと、始業に間に合わないと思った。
ところが、あてもなくブラブラ散策を続けていたせいで、いったい自分が今どこに居るのか分からなくなっていた。
私は、近くで農作業をしている老人に、私の家の住所を言って道順を教えてもらった。
私は走った。
途中、人間と同じくらいの大きさのカラスが道を
私は、その巨大なカラスの
カラスは怒ったように「カァッ」と鳴いたが、私は気にしなかった。
さらにしばらく走ると、今度は道の真ん中でタンチョウ鶴のカップルが〈愛のダンス〉を踊っていた。
私は、二羽のタンチョウ鶴の間に割って入るようにして走り、通り抜けた。
鶴たちは驚いて飛び立ち、メスの鶴は、少し離れた田んぼの真ん中にいた他のオス鶴グループの方へ飛んで行った。
カップルの片割れだったオス鶴は、他の鶴たちの方へ飛んでいくメスを悲しそうにジッと見ていた。
私は可哀想だな、とそのオスを見て思った。
カップルだった鶴たちが別れる
しかし私にとっては、学校に間に合うことの方が大事だったから、構わず走り続けた。
どうにか家に帰ると、もうほとんど時間が無かった。
私はシャワーを浴びるため、大急ぎで風呂場へ向かった。
廊下で母と
私は、母に対して「何で今日から学校だって教えてくれなかったんだ! 早く制服と鞄を用意してくれ!」と怒鳴ってしまった。
私は脱衣所で服を脱ぎ、シャワーを浴びた。
熱い湯を頭に浴びながら、ふと(夏休みの宿題は全て終わっていただろうか?)と不安になった。
夏休みの自由研究は、確か七十パーセント位までは、やり終えていたはずだ。
しかし、残りの三十パーセントを仕上げて宿題を完成させてあったか?
それがどうしても思い出せなかった。
シャワーを浴びながら、私は
こんな夢を見た/始業式の朝 青葉台旭 @aobadai_akira
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