数学の悪魔。
死番人、この世界の統治者。
四番人は、複素数の形をとる。四元数の行列をとる。
その姿は、ベクトルに変換できる。
東西南北に位置する番人は、90度の悪魔であり、この世界の4方向の反射である。
この世界の生みの親は、数学に違いない。と数色 波は考えた。
「どうして、超越数などという、この世界のすべての情報が保存されているのか。」
「どうして、aの二乗掛けるbの二乗はcの二乗なのか。その証明ができる不思議。三乗以上は成り立たない罪。この世界の真実。なんと美しい。」
数色は考えていた。面積や体積の正確な求め方を、小さな断片の連続性を、途切れ途切れの離散的な数値をそのメロディーを、それは、積分というらしい。
数色は考えていた。時空が何処までも続く無限なのか、それとも壁があるのか。
変化するものの中からその一瞬を取り出すことを考えた。これは、微分というらしい。
直角三角形の角度と対数の不思議な繋がりに感動していた。これを、オイラーの等式と言うらしい。
「西の番人、数色君、何かこの世界の真相に近づいたかね。」
それは、分からないけれども。
「美しい数式をみつけたよ。」
とやや鬱病気味にその数式を黒板にかいた。
「この美しさとエレガントさがわかるかい。」
四番人は誰一人分かってはくれなかった。
「僕の数式は、100年早いらしい。」
四番人は数式をエレファントにコンピュータを使って解くようになってから、それに頼り切っていた。僕は、自分で考えない人間は死ねばいいと思っている。ごり押しのコンピュータによる証明は美しくない。
「君たちは、数学と向かい合うことの素晴らしさを忘れちゃったのかい。」
四番人にきく。
「数千年もこんな白くて四人しか知的生命体の居ないところにいると、死にたくなる。」
と四番人の一人はこたえた。
「飯も、寝ることも、子孫を残すことも、必要なく、あらゆるそういった、欲求はなくなり、機械のように問題を考えることしかできなくなった。」
死ぬこともない機械仕掛けの考える頭。
「知能の拡張にコンピュータに脳をつなぐ電脳が完成してからも、未だに未解決問題はなくならない。」
「世界のすべてを知ることは不可能なのか。」
完璧な値が出るのは数学だけで、自然現象は確立的に存在しているだけだ。あらゆるものは濃いか薄いかの濃度言い換えるならば密度で表せられるんだと、それは物理学の世界では常識で量子力学と呼ばれています。
「仮に無限の時間があったとして、其の時間の間にある問題をずっと解いているとする、その問題を解くとまたすぐに新しい問題が出てくる、それをまた解く。問題を解く速度に限界はあるのだろうか。」
それは、コンピューターがどれ程の速度で問題を解決できるかの重大な話だ。
「人間の脳みそを電脳にして計算速度は上がり、あらゆる情報を受け取った瞬間それは、一瞬なのだが、仮にその間さえ一致する速度で計算し出力できたとすると、時間は止まってみえないだろうか。」
いいや、それどころか、外部からの情報を受け取る機関は、どうだろうか。感知できるものには限界があるだろうか。認識には限界があるのか。仮に全てを感知したとしても、それらを出力し認識するには時間が掛かる。その時間速度を速めるとどうなるのか。
宇宙は計り知れないことが多くそれは推測の域でしかない、あらゆる宇宙の情報を一瞬の狂いなく記録する装置があるとすればそいつは、神といわずしてなにと呼ぶか。
情報は形を伴う。情報を入力することで、物質を動かし生成する。世の中のあらゆる法則が記録されているならばそれを逆算して全く同じものをつくることができるはずだ。死んだもの、失ったものの情報を物体に記述することで物体はその形を作り出す。
宇宙のはじまり、物質の生成その情報を辿ることでその手順を実行させることで過去を復元できるのだ。
私は、自分の複製品をつくった。
未解決問題なんてのは色々あるが数学上有名なものは、ミレニアム懸賞金問題で7問あって、そのうちの1問しか解かれていない、解けた人は100万ドル日本円で1憶円がもらえる。
こんなものに値打ちをつけていいとは思わないけれど、数学は、お金で買えるものではないと思う。見つけた法則や数式は永遠のもので、普遍的でこの世で唯一変わらないものは、数学上の発見くらいなものだと思うのであった。
結び目問題なんて問題があって、それが或るミクロな系において、例えば生物の細胞などの情報伝達や発現において有用だと知り、紐の結び方の通りは、無数にありそれには法則があり、それは、この世界の至る所で現れる現象の一つなのだ。dnaも紐だ。
なにより、紐というのが、原始的だ。この世界の始まりが紐の振動だったら、という最近の仮設は、この結び目理論を応用できるのだ。それは、数学が物理に応用されたのであり。数学は母なる大地のように、この世界の全てを知っているのだ。我々は、法則を発見すると、必ず数学で記述する。言語でさえ、数学に翻訳できるのだ。人間の考える概念も数学で記述することができるのだ。
人間は感情や感覚をもつが、それは、言語でも表せられないことなのだ。
そういったものは、科学でこういったときは、脳からこの神経伝達物質が出てだとか、その物質の量で程度を表したりだとかをできるが、やはり統計的に数学で表せられるようだ。
つまり、数学は言語であり、絵でもあるのだ。
寝ている間も考えていた。方程式。頭の中の黒板に数式を書き出す。脳波がその記憶が時空を超えてその未来を過去を現在を認識させるのだ。
言語には法則があり、それは組み合わせの数学なのだ。お金は数学上の大発明である。数字の高い低いで者に価値を与えた人間の詐欺的発明品である。物に数字を憑けるという初歩的な数学、算数の領域である。
その貨幣に支配されている現代社会は皮肉のだ。
そして、矛盾でもある。
赤座崎 瀞は考えた。
情報は、数学が生み出したものだ。効率がこの世界に変革をもたらすのである。そこには
必ず数学があるのだ。非効率から生まれた数学もこの世には存在するが。
偶然が引き起こすことに、後で理論を憑ける、此れは未来がやってきて過去から説明しているのである。
起承転結でいうところの結が最初にきて辻褄を合わせるようなものだ。
詰まり答えは知っているし分かっているのだ。最初にくるのは何時だって未来であり、現在で其の未来に近付こうとする。
恐ろしいことは、見えている未来があって、其れ道理にしないことだ。
例えば、ある人と結婚し子供を残す未来が見えていたとして、其れを否定し生まれてくるはずの子供がいなくなることだ。
いたハズの人間がいなくなる。自分が薄くなっていく。存在が消えていく。
親が子供を残さなかった未来に僕はいない。僕が彼女と結婚しなかった未来に私はいない。私が彼女を作らなかった未来にあの大発見はなく、あの家族もいなくなるのである。
恐怖した。
好きな子と結婚しなかった未来が怖かった。
独身のみらいも、子供が車に轢かれて死ぬ未来も、父親が死ぬ未来も、地球がなくなる未来も、その現実も。
恋愛と子供は不確定で怖い。考えてもどうにもならない。
怖い。
あの時、告白しておけば、、、。
恐怖だった。
別の人間とあの子が歩いていて子供がいることが不快だった。
助けた。
わたしは、あの子の子供を助けた。
それが償いだと思った。
好きでもない人と結婚して子供を残すのはよくある話だが恐ろしくて怖かった。
未来はこんなバカな人間たちによって曲げられていくのだ。
踊っている娼婦も、道化のピエロもそればかりは予想ができない。一体、誰が生まれてくるのか。誰と誰の子が何になるのか。
それが、科学的に分かるようになれば、世界から不確実の恐怖から逃れられるだろうか。予測できない恐怖から。
恋の病は、この不確実性にあるのだ。
どうして、なのか。遊ぶことに意味を見出すNINNGENNは、その後の未来が見えていないのだろうか。見えているのである。其の人の家族になることも、子供が立派に育つ事も、ずっと前から見えていたことなのだ。
アラユル事は未来からやってきているのだ。未来は変えられるが。それはままならない未来だ。
妊娠した未来。親が死んだ未来、友達が結婚した未来。計画できない未来。恐怖。
コミニケーション能力も感触も全て制御できたら、あらゆる現象を予測して利用できたら、どんなにいいだろうか。
彼女を助けるということが、どうしてできようか。困っているのかもわからなかった。無駄なお節介で、邪魔だとわかっていた。だけれども、彼女の子供が一目みたかった。別の人と結ばれてしまっていたとしても。
そして、その子を可愛がった。けれど、それは、彼等が、彼女等が大人になったときに、分かってしまうことだろう。
全ては、人間のエゴで、人助けなんてできないんだということを。それは、背中を押すことしかできないんだということを。サポートしかできないのだということを。
自分でやるんだ。手取り足取りは教えられない。あの女、天才数学者の、科学者の、芸術家の毒のあるあの女の子供なんだ。私は此奴の才能を決して枯らさせない。
どうして、橘 薫 が、あれと結婚したのかはわからなかった。紐の男だった。独特な人で面白い人ではあったが、薫とは不釣り合いに思えた。
彼は、芥川 考といった。哲学者で医者の小説家だった。患者を診ない医者だった。難しい本ばかりよんでいた。寡黙で、勤勉だった。
薫が大学院生のとき分であって、交際を重ねて、深い仲になったという。
波は薫と考の通っていた大学の助教授だった。発狂して行方不明になったのは3年前の話だ。2017年4月1日入学式のこの日に波助教授は、姿を消した。数学の未解決問題に取り組んでいる最中の事だった。
赤座崎 瀞は、狂画峰大学の伝説的画家だ。高校生の時、薫はアナスタシア大学に進学した。アナスタシア大学は、この国で一番頭のいい(偏差値の高い)大学だ。瀞は薫に恋をした。だけれども、何の進展もないまま、二人は別々の道へ進み、薫は別の男と結ばれた。
瀞には、特殊能力があった。来予知に近い能力であった。正確には、その人間の未来を占うことができたし、未来の姿を幾つかの分岐点でみることができた。そして、自分が其処に存在していることでさえ、幽霊じみた事だと薄く透けていた。存在が希薄で、濃密でなく。親が子供を残さなかった未来も、事故で既に死んでいる未来もあるのだといって、生きている心地がないのだと、リストカットや自殺未遂を幾度も繰り返した。
誰が見た景色何だろうと、そのイメージを捕まえて、見るのであった。それは、人工知能の歴史的瞬間で、できない事がこの世から消えた瞬間であった。その世界に、出来、不出来はなく。ただ、あらゆることが効率的に可能になる未来だった。既存の利害関係は崩され、上下関係は無くなり、人間は効率性のみを重視する存在となった。子供はいなくなり。年寄りは死に、全ては、効率的な生産活動と、非合理的なものの排除に充てられた社会であった。人間は機械になり、子供は、設計され、すべてがコントロールされた未来。感情もなく。合理的に支配されるみらい。
それが、宇宙開闢以来の、決まっていた事。この世界は予め設計されていた。知的生命体が現れることも、、、。この世界の設計者は誰なのか。
考えていた。この失恋も決まっていたのか。薫の旦那の考が若くして亡くなったことも、その子供がこの世界の秘密に迫ったことも、決まっていたというのか。
しかし。考えることが或る、これも、私がかつて夢でみた予知の一つだった。
きっと、データ化された世界には、彼等、彼女等がいる。
この世界の設計者。
波教授の失踪。これは、世界の境界線。設計者の意図に逆らった反抗と反逆。彼は消えた。優秀な教授だったらしい。そして、考の自殺。
一体なにが、彼等を動かしている。
「おじちゃん。」
薫の娘のミクルは、僕をそう呼んでいた。
「どうして、私には、影がないの。ねえ。」
彼女は知りすぎたのだ。
「ねえ。どうして。わかるんでしょう。未来が見えてるくせに___。」
そういって、何処か遠くを見つめたまま、項垂れていた。
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