第5話
あらかじめ話しておけばよかったかな。
この木の実は火を点けると酷い匂いを発するのだけど、この匂いは特定の魔物にとってはとても美味しそうな匂いに思えるらしくて、魔物を惹きつける。
鳥型の魔物で美しい瑠璃色の羽を持っている。その羽が飾りとして役立つみたいで、お祭りの時期になると注文が入ってくる。木の実を地面に置いて、少し離れる。
伊佐君はまどろっこしいことをしないで倒したいようだが、この方法が一番早く済むのだ。
ただし。
ちょっとした危険も伴う。
例えば、予想外に魔物が集まってしまったり、とか。
例えば、魔物に囲まれてしまったり、とか。
「なあ、アンタのせいか、これは」
私のせいといえばそうですが、木の実が質が良すぎたといえば木の実のせいでもあるわけで。
こうして囲まれてしまうのも、私としては慣れているわけで。ああでも久しぶりに怒られてしまうかな。
なんて考えていると伊佐君は腰の剣を抜いて目の前の鳥型魔物へと斬りかかっていた。
鳥とは言うけれど、体は三メートル程はある。力も強いから、もちろん私では勝てない。だから傭兵さんを雇うのだけれど。
魔物たちからちょっと離れると魔物の一匹が私に気づいてしまって、翼をはためかせながら近づいてくる。
「おいアンタ!」
伊佐君が慌ててこちらに駆け寄ってきてくれる。
もう一歩もう一歩。あ、伊佐君もあと一歩。
私の前に居る魔物が最後の一匹らしくて一歩、私の方へ踏み出してきて、同時に伊佐君も効果範囲に入ってしまう。
「伊佐君、なんかゴメンね」
私の目の前には樹に縛り付けられた魔物と、片足に蔦が絡みついて樹から吊るされている伊佐君。
私があらかじめ張っておいた罠の一つだ。と、言っても罠を張るときはいつもの傭兵さんに手伝ってもらったのだけど。
魔物が捕まったのが対象を蔦へと縛り付ける罠。約100キロ以上のものにしか反応しないから、魔物か、もしくは重い鎧を着た人、横に大きな人が引っかかってしまう。ちなみに酒場にいたおじさんは前にこの罠に引っかかった。私の忠告を無視したからだ。
伊佐君が引っかかったのは比較的小さな罠で、私が張ったものではない。おそらく狩人の人たちが小さな動物を捕まえるための物。
とりあえず伊佐君は元気そうだから、先に羽を回収しちゃおうかな。
魔物に近付くと警戒されるけど嘴はここまで届かないし、羽は動かせないから平気。
傷の少なそうな羽を何枚か、尾羽を何枚か、もらう。
「下ろしてくれ……頭に血が」
そうは言われましても、問題がありまして。
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