千掛成就
西芹ミツハ
第一話 ヒーローだった僕
僕は、昔みんなが言うところのクラスのリーダーだとか、中心人物という、そういった立ち位置の人間だった。小学生の頃は、クラスで一番に手を挙げて意見を出したり、課外授業の為の班決めでは決まって班長に立候補はもちろん推薦されたりとか、そういう子だった。成績だっていつも体育が一番だとか二番だとかだし、勉強だって苦手な分野があっても、大体みんなより良い点数を取っていた。何か喧嘩があると、僕が仲裁をしてヒーローのように振舞っていた。みんな僕のことを、優等生だとかリーダーだねって褒めてくれていたのだ。中学だって進学校に通えるよう、猛勉強していい成績で入学した。
でも、中学に上がって色々な小学校の子達が集まると、途端に僕より凄い子達がたくさん現れた。小学生の頃、皆のヒーローだった僕は、その凄い子達に潰されていなくなってしまった。所詮は僕も、ただの井の中の蛙だったてことだ。
物事は最初が肝心だっていう。僕は小学生の時と変わらず皆の中心人物たる人間だと思っていたし、リーダーにあわせるNPCみたいな人間なはずがない。そんなわけがないのだ。だから、今まで通り皆のリーダーであるよう、そう振舞っていた。それが肝心に当たる部分だったはずなのに、見た目も、成績も、カリスマ性も、小さな囲いの中では一番だったのに、それよりもっと凄いやつらがいるから、そんなやつらの前で振舞えばただの道化。斜め上に外して、ただただ滑稽なやつに成り下がった。僕だって頑張った。皆に笑われ、指さされても、それでも今までを貫こうとした。ところで中学ってのは、多感な時期だと大人は言う。その多感な時期っていうのは、大人みたいに世間体とか、建前とか、そういうのは本当に関係なくて、なんでも思う通りにできるようなそんな勢いがある。僕を含めて、それをもったやつらは、しかも進学校に通えるんだから頭も回るという極めつけで、道化の僕は凄いやつらに叩きのめされていった。そうして、いつしかどんどん自信が無くなっていって、それは余計に皆をイラつかせる存在になった。今の僕は燃えカスみたいな、ちっぽけで下らない存在だと言われるようにもなってしまった。過去に僕を持ち上げてくれていた子達にも、今は見下げられている有様だ。結局、今の僕は見た目もぱっとしなくて、成績も下から数えたほうが断然早く、道化にもなれない、つまらない凡人以下みたいな扱いをされている。
そんな僕の状況は一度捨て置こう。僕らの住む街には、昔からこんな噂がある。便箋に叶えたい願いを書いて、白紙と一緒に封筒に入れ、その手紙を持って昔は山があったとある場所にゆくとフミコ様という神様だかが願いを叶えてくれるのだと。山のあった場所なんて、都市開発で森林を切り開いたこの街じゃゴロゴロあるから誰も見当が付かないけれど、実際に願いを叶えてもらった人もいるとかで、女子が主に占い感覚でやっている。
その噂を聞いた時、僕もやってみたくなった。僕にはころしたい奴らがいるから。
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