第24話 なんだかんだ言って梅雨も悪くない

 梅雨入りしたのはつい先週の話である。

 毎日のように降り続ける雨に徳人は既にうんざりとした表情で溜息を吐く。


「どうしたの?お兄ちゃん」

「雨が続くから洗濯物が乾かないんだ」

「あー、確かに最近はいっつも部屋干しだよね」

「ホント、梅雨は嫌だ」

「そうかな」


 凪は意外にも徳人の意見に否定的に入る。


「あれ?お前って雨好きだっけ?」

「ううん。どちらかと言えば苦手だけど、でも梅雨の時期だと堂々とお兄ちゃんと相合傘できるから!」


 そんなに胸を張って言われても困る。

 確かに雨の日になるたびに、凪は「相合傘しよ」と甘えた声で言ってくるので仕方なく徳人も大きめの傘に凪を入れて、濡れないように紳士の気遣いをしながら登下校をしているのだ。


「ねえ、そろそろ学校行かないと遅刻しちゃうよ」

「ああ、そうだな。今日も相合傘するのか?」

「うん!当たり前じゃん!」


 凪はギュッと徳人と密着して部屋を出る。

 ザーザーと雨音が他の音を掻き消す。

 凪は徳人の方を見ると、鞄は抱きついている方の腕に通し濡れないようにしているが、反対側の肩は凪に寄せているせいで若干雨がかかっている。


「お兄ちゃん、肩濡れてる」

「ああ?別にいいよ、お前に風邪ひかれたら困るし」

「お兄ちゃんが引いても困るよ!」


 だったら、せめて自分の傘を差してくれと思うのだが。

 ちゃんと鞄には折り畳みが入っているのだ。


「濡れるんだったら、私も少しくらいは大丈夫だから」

「あっそ。分かった」


 徳人はそう言うと若干、傘の角度を変える。

 けど、凪に見せないようにやっぱり徳人の肩は濡れているのだった。

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