第38話スライムはどこに?




「ねぇ、メド。シクロ湿原って、どこにあるか知ってる?」


 淹れたての、甘々紅茶に口を付けながら、隣のメドに尋ねる。


「ん? ワタシはあまり地名に詳しくない」

「そっかぁ~」

「ん、ごめんなさい」

「ううん、別にいいよ」


 そうだよね。

 メドはこう見えてもドラゴンだもんね。

 地理とかには詳しいだろうけど、地名には疎いよね?



『ん~、だったらアドは勿論、エンドも知らないよね? 人間が付ける名称なんか興味もないだろうしね。なら、街で聞いてみようかな?』


 そんな二人は、今はお庭の改修工事に取り掛かっている。

 エンドを中心に、アドがそれをフォローする形で。


 昨日帰って来た時の庭の惨状を見て、エンドが罪滅ぼしを兼ねてやりたいって言っていたので、早速取り掛かったみたいだ。


 因みに、テラスや綺麗な庭園を破壊したのはアドだ。

 私との戦いで壊しちゃったんだよね。


 そんなこんなで朝食が終わった私たちは、今はお屋敷の庭に来ている。


 アドとエンドは仲良くお庭の復興に、私とメドはシーラちゃんが用意してくれた、テーブルセットでお茶してる最中だった。



「ん? なんでフーナさま」


 ぼーっと作業中の二人を眺めていると、メドから聞かれる。


「うん、ちょっと探し物があったんだ」

「探し物?」

「うん、スライムなんだけど…… 知ってる? スライムって魔物」


 なぜ、私がスライム、そしてシクロ湿原の場所を聞いたかというと、それは女神のメルウちゃんから次の情報が入ったからだった。


 願いの二つ目とされるスライムの討伐をしてちょうだいと。



「ん、知ってる。けど、もう全滅してると思う」

「え? 全滅っ!? なんで?」

「ん、だって300年以上見ていないから」

「さ、300年…… それは確かに全滅したと思っても仕方ないね…… ぐむむ~」


 マジかっ!?

 今回は簡単だと思ったのに、まさか捜索の方が難易度高いとか……



「うう~、でも一度行ってみるよ、シクロ湿原ってところ。場所知らないけど」

 

 女神さまの情報なんだから、さすがにいないって事はないだろうし。


「あ、フーナ姉ちゃん。シクロ湿原に行くのか? がう?」

「うん、ちょっとスライム探しに、って、もしかしてアド知ってるの?」


 作業の手を止めて、私とメドの会話に入ってくるアド。


「がう、知ってるぞ。大きな水たまりがあるところだ」

「マジ? そこ案内できる?」

「うん、出来るぞっ!」


 そう言ってニカと微笑み、自信ありげにドンと胸を叩く。

 その際に、アドの大きな双丘がボヨンボヨンと重力を無視して跳ねる。


『むはっ! いいねっ!』


 それを見て歓喜の声を上げる私と、


「じ~~~~~~」


 アドの隣のエンドが、指を咥え恨めしそうに見ていた。


「ん?」


 なんだろう? 

 もしかしてエンドは羨ましいのかな? アドのデカい柔らかメロンが。

 でもエンドはこの中でのちっぱい担当なんだから、そのままでいてね。



「で、結局どうするんだ? 俺は今エンド姉と、庭作ってる途中だぞ?」

「あ~、そうだよね、なら大体の場所だけ聞いて、後は――――」


 適当に飛んで探せばいいかな?

 そんなに大きな湿原なら、空から見ればわかりそうだし。



「我は独りでも構わないわよ? 元々は独りでやるつもりだったし」


 なんて、悩んでいるとエンドも口を挟んでくる。


「え? ならアドを連れてっていい?」

「うむ、我は問題ないわよ?」

「そ、そうっ! なら――――」


「ん、エンドもお仕事中断する。街に行くから」


 私とエンドの話にメドも加わってくる。


「え? 我が街に行くの? なんでよメド」

「ん、いつまでもワタシの服着てるのもあれだから。エンド用の買いに行く」

「あ、そうよね。これ、メドの服だものね?」


 そう言ってエンドは自身を見下ろし、軽く頷く。


「ん、だから二人ともお仕事は終わりにする。今日はアドがフーナさまの案内に。エンドはワタシと街に買い物に行く。これで決まり」


 私たちを見渡してコクコクと頷くメド。

 どうやら既にメドの中では決定事項になってるみたいだ。


 タタタッ――――

 ガバッ!


「メド、ありがとうっ! なら早速わたしはアド連れて行って来るねっ!」


 お礼を言いながら、どさくさに紛れてメドの体に抱きつく。


 むふぅ~っ! むふぅ~っ!


「んんっ! フーナさま苦しい。それと鼻息がくすぐったい」

「クンカクンカ」


「メド、遊んでないでもう行くわよ? あなたが先に行かないと場所わからないから」


 メドとじゃれ合う私を見て、エンドが薄目で口を開く。


「ん、わかった。それじゃ、フーナさま行ってくる。アドもフーナさまの言う事を聞いて」


「がう、わかったぞっ! メド姉ちゃんっ!」

「エンドもエロ可愛い下着も買ってもらってね~っ!」 


 そうしてメドを先頭に、エンドも後を付いて飛んでいった。



「さ、それじゃわたしたちも行こうかっ!」


 メドたちを見送った後、アドに振り向き両手を広げる。


「がう、それじゃ案内するなっ! フーナ姉ちゃん」


 アドはそう答えて、私の腕の中に自然と入ってくる。


「う、うんっ! ア、アドもお願いねっ!」

 

 ひょいっ!


 私はアドを抱き上げながら、上擦った声で答える。



『むふふ、まさかこんなラッキーな流れになるなんてね…… アドは人型では飛べないから、きっと私に抱っこされると思ってたんだよねっ! どれ、目的地に着くまで色々と楽しんじゃおうかなっ!』


 お姫さま抱っこされて嬉しそうなアドの顔と、腕の中の感触を感じてそう思った。


 そうして私たちもメドたちに続いて、お屋敷を後にしたのであった。

 女神の願いと、私の煩悩を満たす為に。


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