第30話決着、そしてEND




「『まじっくどーむ』」


 二人に魔法の障壁を張って


「んんっ!」


 ドンッ!


 空に向かって地面を蹴る。

 そして森を覆う木々を抜け出し、空中に身を浮かせる。



「いたっ!」


 森を見下ろし私たちを探す、白ENDを見つける。

 その姿は、片手片足が巨大な黒ENDの形のままだった。



「『まじっくどーむ』」


 メドとアドを除いて、私と白ENDだけを広範囲に空中に閉じ込める。


『魔法は直ぐに破られる…… ならあれしかないっ!』



 トン


 自分で作ったマジックドームの床に着地する。



「わたしはここだよっ! 白ENDっ!」


 私たちを探している空中の白ENDに向かって叫ぶ。



『やはりまだ生きてたなフーナ。だけど今更こんな魔法なんて――』


「わかってるよっ! お前に魔法が効きづらいなんて、だったら――――」


 私が張ったマジックドームを見て嘲笑する白END。

 それに対して私は長杖を構える。


 わかってる。


 白ENDには恐らく何らかの女神の力が働いている。

 だから女神の一人に爆上げされた、私の魔法はある程度相殺されていると。



「だったら自分に魔法をかければいいだけだよっ! 『ぶーすとあっぷ』」


『な、なにっ?』


 ブーストアップ『身体能力上昇魔法』を唱える。


 それに伴い、私の各能力が上昇した。


 【攻撃力上昇】【俊敏上昇】【物理耐性上昇】



 ただし、その効力は通常とは一線を画すもの。



「んっ!」


 ドンッ


 私は白END目掛けてマジックドームの地面を蹴る。

 その姿は、さながら人間ミサイルだ。


『な、速いっ!?』


 シュンッ!


「あっ!」

『え?』


 ガンッ!


 勢い余って白ENDをスルーして、マジックドームの天井に激突する。

 ちょっとだけ狙いがずれたようだ。


「っ、いててっ! 今度こそっ!」


 そのまま身を翻し、天井を強く蹴り、すぐさま追撃する。


 ギュンッ!


 今度は白ENDに向かって高速で飛んでいく。

 これなら間違いなく直撃コースだ。


『くっ! このっ!』


 グッ!


 避けられないと悟った白ENDは、咄嗟に異形な片手を前面に出す。

 その巨大さ故に、完全に白ENDの姿を隠していた。



「そんなのっ! 能力底上げした今のわたしには効かないよっ!」


 巨大な片腕を前面に出した、白END目掛けて高速で突っ込んでいく。

 今の私にはいくら強固でも、防御など無意味だって分からせる為に。



 そう思っての、突撃だったんだけど――――


『さ、避けられぬならっ!』


 ギュンッ!


「えっ?」


 直撃の瞬間、白ENDの手の平が大きく開かれる。

 防御体制だった拳の形から掌を下に向け、指を上に逸らせる。


 その形はまるでジャンプ台のようだった。


 したがって、そのジャンプ台に侵入した私は


「あっ!?」


 キュンッ!


 そのまま手の甲に着陸し、


 シュンッ!


 ゴガンッ!


「あぎゃっ!」


 すぐさま離陸し、白ENDの後ろの天井に激突する。



『は、ははっ。驚かせおって、そんな浅知恵の技が通じる訳ないだろうっ!』


 腕を払い、何事もなく姿を現した白END。

 その強気な態度の割には、口端が若干引き攣っている。



「く、くそぉ~っ! 今のは上手くいったと思ったのに~っ!」


 スカッスカッ!


 フライの魔法で空中に留まりながら、悔しさで地団太を踏む。

 そして、空中で空振りする音が無性に恥ずかしい。



「よしっ! もう一回行ってやるっ! もうまぐれは起きないからねっ!」


 白ENDを睨みつけ、グッと両足に力を溜める。

 それでもすぐには、さっきまでの様に迂闊に飛び出さない。


 確実に直撃させる為に、全力の一撃を喰らわす為に。

 私はその機会を待つ。いつでも発射可能な状態で。



『ははっ! もう一回だと? 何度やってもそのままいなしてやるっ!』


 その機会は意外にもすぐに訪れた。

 かかってこいとばかりに、前面に手を出し先ほどの構えを取る。

 その表情には薄く笑みが浮かび油断が見える。



 ググググッ 


 限界まで貯めていた力を


「………………」


 ギュンッ!


 無言のまま解放し、白ENDに向かい飛んでいく。


 確かにこのままだと、先ほどの焼き増しだろう。

 軽くいなされて自爆するのが関の山だ。


 だから私は魔法を唱える。


「『すとーんたわー』っ!」


 だって私は魔法使い少女だから。



 私が唱えた魔法は石でできた筒状なもの。

 ただし、その長さは30メートル。太さは私の身長の2倍以上ある。


 その巨大なストーンタワーは、白ENDの真下に出現し、


「ここだっ!」


 白ENDの防御の腕に直撃し、真上にカチ上げる。


 ガンッ!


『なっ!?』


 巨大な黒ENDの腕がカチ上げられ、驚く白ENDの顔が覗く。

 それと同時に、風圧で捲れ上がったスカートの中身と、白いお腹が見える。


「んんっ!」


 ギュンッ! 


 私は無防備の白END目掛けて高速で飛んでいく。

 決して、白パンツを目指しているわけではない。



「いっけぇ~っ!」


 ギュンッ!


 更に回転を加え加速する。

 そしてその超加速故に、ソニックブームが発生する。

 そのスピードは、かるく音速を超えていた。



 ドゴォオンッ!!


『ぐふっ!?』


 その一撃は、白ENDの下腹部に直撃し、


 ゴガァンッ!!


『がぁぁぁっ!!』


 そのままマジックドームに叩きつけられ停止する。



『う、ぐぅ、ま、まさかこんな単純な攻撃でダメージなど……』


 白ENDは片目だけを開け、苦し気に私を睨む。


「だってしょうないじゃん。白ENDのあなたに魔法が効かないんだから、直接攻撃するしか方法ないんだもん」


 私は白ENDから離れて、呻いている様子を見る。

 そして女神の装備の長杖を両手で強く握る。


『こ、今度は何をっ!?』


 無言で杖を振りかぶる私に、白ENDが聞いてくる。

 

「何って? これで叩くんだよ。わたし魔法使い少女だもん」


 そんな怯えが見える白ENDにしれっと答える。


『は、はぁ? なぜ魔法使いが杖で殴るなどっ!? しかもそんなもの我に――』


「効くよ。だってわたしは魔法で何倍も能力上げてるもんっ! それにこの杖は絶対に壊れないもんっ! 魔法が効かないあなたの攻略法は物理で殴るだもんっ! だから――――」


 白ENDが何かを言い終わる前に杖を振り下ろす。


 ブンッ!


 ドガンッ!


『がっ!』


 白ENDは咄嗟に腕で頭部を覆うが、そのまま小さい体は真下に飛んでいく。


「まだだよっ!」


 ギュンッ!


『なっ!?』


 マジックウオール足場に、空を蹴り白ENDの背後に回り込む。

 そして驚くだけの、無防備な背中に杖を叩きつける。


 ドゴォンッ!


『が、はぁっ!!』


「まだまだっ!」


 すぐさま真横に飛んでいった白ENDを追う。

 


「んんんっ!」


 今度も超高速で背後に回り込み、白ENDを待ち構える。


「これはっ! 今までメドを苦しませた分っ!」


 ドゴォンッ!


『があぁぁっ!!』


「これはアドを道具として使い、そのまま使い捨てしようとした分っ!」


 ドゴォンッ!


 執拗な、そして強力な一撃を小さい体に何度も受ける白END。

 防御も回避も、そのスピード故に間に合わない。


 空中を幾度も殴り飛ばさせる、白ENDの姿は既に満身創痍だった。

 だけど、私の怒りは収まらない。


 二人を怯えさせ、そして攻撃した白ENDを私は許せない。



「そして、これがっ! ――――」


『あ、あ、あ、我は、もう……』


 開く瞳も虚ろで、意識も僅かな白END。

 誰が見ても、その姿に反撃の余力も意志もない。


 それを知っても、私は攻撃の手は緩めない。

 

 渾身の一撃を喰らわせる為に、強く杖を握り直す。


 そして――――



「これがメドとアドを傷つけた、私の怒りの一撃だぁ~っ!!」



 ドゴオォォォ――――ッ!!


『ご、があぁぁっ!!』


 そして最後の一撃を白ENDにお見舞いする。



 ひゅ~~


『………………』


 ぽてん


 渾身の一撃を受けた白ENDは、意識のないままマジックドームの上に落下する。


「よっ!」


 トン


 私はそれを追って、白ENDの近くに着地する。


「もう、完全に意識がないみたい…… それでも止めを刺さないと……」


 横たわる、ボロボロな小さい体を見下ろし杖を握り直す。

 この白ENDを消滅させることが、女神の願いの一つだからだ。



『う』


「っ!?」


『う、があぁぁぁぁっ!!!!』


「な、な、何っ?」


 途端、白ENDが絶叫を上げ始める。

 ドクンドクンと、小さな胸が何度も跳ね上がり、悲痛な叫びを辺りに振り撒く。


「く、なんだかヤバい感じ? まさか第三形態とかっ!!」


 慌てて杖を振り下ろす。

 今度は確実に止めを刺すために。



「うわっ!? 眩しいっ!!」


 眩い光の奔流が、白ENDから溢れ出し天を昇る。

 ただその光は眩しくはあるが、なぜか暖かくもあった。


「あっ! 女神、さ、ま?」


 その光の中に白い光の幻想を見る。

 メルウちゃんと同じ、神々しい女神の姿を。



「あ、もう消えちゃった…… 何だったんだろう? あれ」


 光りが消えていった空を見上げるが、もう何もない。


「ああっ!?」


 ただその変わりに、足元に横たわる小さな存在を見付ける。


 それは――――


「グヘヘヘヘヘ――――っ!!」 



 一糸まとわぬ姿で横たわる、黒髪の幼女だった。

 私は無意識に涎をたらし、その幼女に近寄る。


 完全に気を失い、悪い雰囲気もなくなっていたから。




 こうして女神の願いの一つ目


 『エンシェントドラゴンの討伐』


 を何とか達成する事ができた。



 次は黒い幼女の身体検査だ。


「じゅるりっ!」

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