第21話対決ロックバード!



「よ、よーし、いい感じだよっ」


 私は街の2階建ての建屋の高さを通り過ぎて更に上昇していく。


 ロックバードはまだ街の上空を旋回している。

 きっと私を探してるんだろうと思う。


「おーいっ!ノーパンの幼女っ!!」

「へっ?ノ、ノーパンってっ!?」


 大衆の面前でおかしな事を大声で叫ぶ男の声に下を見る。

 

「あ、この声って?確か……」


 あ、あの人は建屋に落ちた時に私のお尻を見て喜んでた変人だ。

 そして私がブロアの魔法で吹き飛ばしちゃったんだよね?


 無事だったならいいんだけど……

 で、でもさっ!


「な、なによロリコンっ!」

「ロ、ロリコンだとぉっ?なんで俺がっ!」


 なんて私の口撃にアワアワしている。


「って、今はそれどこじゃねぇやっ!奴の弱点は知ってるかっ!」

「じゃ、弱点?あの大きな鳥さんの?」

「そうだっ!ロックバードのだっ!」

「し、知らないよわたしはっ!だって初めて見たもんっ!」


 とロリ男に叫んで返答する。


 だって魔物なんて熊と狼とドラゴンしか会ってないもん。

 あ、ドラゴンは魔物じゃなくて幼女の分類だった。きっと。


「だろうなっ!見た目子供だからそうだと思ったっ!アイツの弱点は『水』だっ!だから水属性の魔法が効き目があるはずだっ!」


「な、なるほどねっ!それでやってみるよっ!」


 へぇ、鳥さんは名前が石だから、弱点は水なのかな?

 どこかの発電ネズミのアニメみたいだね。


「ああ、頼んだぜっ!ノーパン幼女っ!」

「うぐっ!」


 私はまだノーパンを連呼するロリ男を「ギン」と睨みつける。

 マジでやめて欲しい。

 このままではそれで定着しそうだしっ!


「うう、もういい加減やめてよぉっ!わたしの名前は楓奈ふうなだからねっ!次からはそう呼んでよねじゃないと怒るよぉっ!!」


「お、おう。フーナだな?悪かったぜっ!今度からはそう呼ぶぜっ!でもそうは言うがよぉ――――」


「うん。よろしくっ!」


 私が激おこプンプンモードだと察したロリ男は

 すぐさま謝罪してくれて約束してくれた。

 なんかイントネーションがおかしい気がしたけど。


 でもこれでもう安心だ。


「でもよぉ――」

「ん?」


 あれ?まだ話し終わってなかったんだっけ?

 なんかロリ男がまだ何か言っているよ。


「でもよぉ、今だってノーパン見せびらかしてるんだぜっ?フーナは。だから俺が間違ってるともあながち言えねぇよなぁっ!!」


 なんて聞きたくもない台詞が聞こえてきた。


「へ?ノーパン?見せびらかしてる?」


 私はそれを聞いて「かぁ~」と顔が赤くなると同時に、

 すぐさま衣装の下を見てみる。


 バサバサバサッ


「………………」


 うん、確かに長いローブが杖と風のせいで捲れてるね。

 真下から見たらきっと言えないところも見えちゃってるよね?

 でも杖のせいでギリギリ見えないかもだけどね? 


 あ、それなら「はいてない」で誤魔化せるかもっ!




※※※※



「みず、みず、みず」


 私はゆっくりと上昇しながら砂漠でオアシスを目指す

 遭難しけかた者の様に何度も口ずさむ。


 水が弱点だとわかった。

 でも何の魔法が最適か見つかるまでに考えないと。


「あまり目立ちたくないから一網打尽にしたい」


 そう。それが理想的。


 1匹ずつちまちま倒してたら時間もかかるし、

 被害が広がる恐れもある。

 

 それにそれだけ私が目立ってしまう。

 それだけは避けたい。


「だって、ただでさえわたしの真下に人だかりができてるんだもん」


 あれって空を飛ぶ魔法使いが珍しいだけだよね?

 決して私のツルツルを覗こうとしてるわけじゃないよね?

 さすがに肉眼では見えないだろうから大丈夫だよね?



「うーん、森の火を消した『れいん』の魔法じゃ街を壊しちゃうし『うぉーたーすぴあ』だと時間がかかるし」


 私は首を傾げながらちょっとだけ思案する。

 早くしないと被害が出ちゃう。


「あ、なら街の外れに誘導してそこで一気に魔法使えばいいんだっ!」


 私は名案とばかりに「ポフ」と手を叩く。


 小気味よくポンと鳴らないのはもう慣れた。

 この衣装についてはもうどうしようもないし。



『グゥアッ!!』


「へ?」


 やっと冒険者ギルドの屋根の上10メートルくらい上がったところで

 どこかで聞いたことのある鳴き声が聞こえてきた。


「あっ!」


『グゥアッ!!』


 私より少しだけ上空で羽ばたいている3メートルくらいの

 ロックバードと目が合った。


『グゥアッグアッ!!』


 ん、なんか前足黒くなってない?焦げてる?

 それにしても、


「あっ!もしかして仲間呼んでる!?ヤ、ヤバい早く街の外に誘導しないとっ!あとあの足黒いのさっき私を掴んで街に落とした鳥さんだよっ!復讐に来ちゃったよっ!」


 私はあわあわしながらフライの魔法で高度を上げる。


「うう、ゆっくり、速くっ!」

 もう少し高くいかないとまだ他の建物にぶつかっちゃうから。

 

 バサバサバサバサバサッ

 バサバサバサバサバサッ


『グゥアッ!!』『グゥアッ!!』

『グゥアッ!!』『グゥアッ!!』

『グゥアッ!!』『グゥアッ!!』


「あ、ああああっ!あ、集まってきちゃったよっ!!」


 たくさんの羽ばたき音の後、うるさいぐらいの鳴き声が集まる。

 その数は凡そ10体。


 私はそれに囲まれていた。

 これでは逃げ道はもうない。


「うううっ、ま、魔法使うしかっ!」


「フーナさまっ!」

「え、この声はっ?」


 魔物の姿で周りが見えない中、地上の方から声を掛けられた。

 この可愛い声は私を救ってくれる愛しの――――


「メドぉっ!!」


 私はギルド建屋の近くでアドと手を繋いでるメドを見つけた。


「フーナさま、どうして――――」

「それよりもたすけ――――」


 バサバサバサバサバサッ

 バサバサバサバサバサッ


「うぎゃ――――!!!!」


 私はメドに助けを呼ぼうと大声を上げたら、ロックバードがそれを挑発と取ったのか分からないけど一斉に私目掛けて襲ってきた。


『グゥアッ!!』『グゥアッ!!』

『グゥアッ!!』『グゥアッ!!』

『グゥアッ!!』『グゥアッ!!』


「ぎゃぁっ!、いたいいたいっ!」


 ロックバードは私を揉みくちゃにしながら、長い帽子やらローブやらを口ばしでついばみ、引っ張り、前足で衣装を剥ぎ取ろうと攻撃している。


「ちょ、ま、まだ早いってっ!街の外に――――」


 私は振り払おうとブンブンと短い手を振るが

 ヒュイと軽々しく躱して何度も仕掛けてくる。


「て、ちょっと何やってんのっ!!」


 長いローブのスカート部分が狙いやすかったのか、

 ロックバード5体が裾を口ばしで挟み上に向かって引っ張る。


 もしかしてどこかに連れ去ろうとしてるのだろうか?


 いいや、それよりも――――


「ちょっ スカート捲らないで!脱がさないでっ!今度こそ丸見えになっちゃうよ!てか前が見えなくなってるよぉっ!!これ絶対丸見えじゃんっ!!」


 私は慌ててスカートを下に引っ張るが、前を下げると後ろ、後ろを抑えると前が、それぞれ丸見えになっていた。


「うううううっ!も、もう怒ったっ!『うぉーたー』!」


 私はもう我慢できなくなり腕を上げて魔法を唱えた。

 それでも街の被害を考えてただの水を出す魔法にした。


 水に弱いのならばこれで少しは怯むだろうと思いながら。


 だったんだけど…………



 ザッ、バァァァ―――――ンッッッッ!!!!!!



「うひゃぁっ――――――っ!!!!」


『グゥアッ!!』『グゥアッ!!』

『グゥアッ!!』『グゥアッ!!』

『グゥアッ!!』『グゥアッ!!』


 私の唱えたウォーターの魔法は私の頭上から降り注いだ。


 ただその水量と水圧が尋常ではなかった。


 私から中心の半径20メートルに滝のように降り注いだ。

 その超水圧でロックバード10体全てが掻き消えた。



 ポタポタ


「………………」


 私の帽子のつばから雫が垂れる。

 装備のお陰で私の体は何ともないし濡れてもいない。


 だけど、


 私はそっと地面に視線を落とす。


 メドが近くにいた数名の人たちを何かの魔法で覆っていた。

 きっと守ってくれたんだろう。


 ありがとうね、メド。


 でも




「あわわわ、ど、どうしよぉ~~絶対怒られるよね……」


 私は足元にあったはずの冒険者ギルドを探して慌てる。


「ううう…………」


 だってそこには水圧で穿った大穴しかなかったんだもん。


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