第20話街に墜落。そして空に再び




「痛ったたぁ~~」


 私は鳥の魔物のせいで、空から落下して屋根を突き破り、

 何処かの建物の中に落ちてきちゃった。


 そして私はあちこち体を確かめる。


「うん。体も衣装も大丈夫みたいっ」


 痛たたぁ~~なんて思わず言っちゃたけど

 相変わらず色々頑丈なお陰で助かったよっ。


 それにしても私は――――


「一体どこに落ちちゃったんだろう?」


 私の周りには、落ちた衝撃で床には大穴が開いており、

 屋根の破片らしいガラクタも散乱していた。


「街の何処かに落ちちゃったんだけど……どこ?」


 そして辺りはモクモクと砂埃が舞っていた。

 これでは周りがよく見えない。


「う~~ん」


 ここが何処かも重要だけど、私が落ちちゃった時に

 怪我した人がいたら大変だ。


 取り敢えず視界の確保だよね。


「うーん、こういう時の魔法は『ぶろわ』ってわぷぅっ――――っ!!」


 私は足元から空気を出して埃を一気に散らす。


 その際に長いローブが捲りあがり顔に覆い被さる。

 どうやら加減を間違ってしまったようだ。


(ふぐぅ~~っ!!)


「うおっ!火の付いた何かが落ちたと思って来てみりゃ、

 なんだいきなりこの風はッ!」


(ふぐぅっ?)

『えっ?』


(ふぐぅ、ふぐぅ?)

『あ、誰かいたっ!大丈夫かな?ケガしてないかなっ?それにしても――』


 私はジタバタとめくれ上がった衣装の中で暴れる。


 ふ、服が邪魔だよぉっ!!

 引っ張っても引っ張っても頭が出ないよぉっ!



「はぁ何だァ? 突風の次に今度は子供のケツが見えるぞッ!?」


(ふぐっ!?)『けつ?』


「しかもデケぇ蒙古斑までついてやがらァ。何だって子供がこんなとこにッ?」


(ふぐぐっ!ふぐっ?)『な、何それ私知らないっ!ってそれよりも』


 ピタッ

 フルフル――――


「うん? 今度は止まった後、震えだしたなァ?」


(ふぐぐ、ふぐっ!ふぐふぐ、ふぐぐぐぐっ!?)

『い、今、私お尻丸出しなのぉ!衣装が捲れて下半身丸見えなのぉっ!?』


 あああ、そう言えば今日は街にパンツを買いに来たんだもんっ!

 衣装の下はノーパン、ノーブラ、ツルペタだよぉっ!!


(ふ、ふぐぐっ!)

「『ぶ、ぶろわっ!』」


 私は咄嗟に足元から強風を吐き出す魔法を再度唱える。

 衣装はもう限界まで捲れてるので、もう気にする必要はない。


「な、何だ急にっ? うわ飛ばされっ―――――!?」


 ヒュンッ


 し――――――――ん


 そうして男の悲鳴と共に辺りは静かになった。

 これで目撃者はもういないだろう。


バサッ


「ふうっ。よし、何とか脱げたっ!」


 私は被っていた衣装を脱いで辺りを見渡す。


「こ、これって、私のせい? だよね…………」


 私は辺りを見渡し、その惨状を目の当たりにし、息を呑む。



 ブチ破ってきたと思われる天井や床の大穴。


 そしてこの建屋のものと思われる、たくさんのテーブルやら椅子やら、扉も窓も全て吹き飛んでいた。こっちはきっとブロワの魔法の影響だろう。何かの紙らしき物も多数宙を舞っていた。


『あわわわわっ~~』


 私はその惨状に驚愕し、両手で口をふさぐ。


(う、ううう……)

(い、一体何がっ!?)

(ちょっとこれ、な、何なのよぉ――)


「えっ?」


 そして盛大に散らかったガラクタの中から、

 数名の驚声が聞こえてくる。


「あ、大丈夫っ!!」


 私はすぐさまその声の方向に駆け寄る。

 何やら長い木製のチェストらしきものの下敷きになっている。


「す、すぐどかすからねっ!」


 私は両手でちょこんと掴んで、ゆっくりと持ち上げ脇に降ろす。


「だ、大丈夫っ!!」


「なっ!?って痛つつっ!」

「へ?」

「こ、子供?」


 そこには男性二人と女性の一人が埃まみれで丸くなっていた。


 男性の方は30代と20代くらい。

 女性の方は10代くらいだろうか。


「あ、あのお体は、どこか痛いところは…」


 私はおずおずとそんな3人に声をかける。

 見たところ大きなケガはないようだけど……


「あ、ああ大丈夫だ。少し頭を打っただけだ」

「俺っちも大丈夫だよっ!」

「アタシはちょっと腰が痛いだけだわ」


「そ、そう良かったぁ~!」

 私は無事な声を聴けてほっと胸をなでおろす。


 なら、ちょっと聞いてみようかな?

 色々と。


「あ、あのぉ~ここって何処ですか?」


 私は周りを見渡しながら聞いてみる。

 

 結構大きな建屋とはわかる。

 それと窓枠がない外にも建屋が並んで見える。


「?あ、ああ、ここはノフラの街の冒険者ギルドだが……」


 と、3人の一番の年長に見える短髪でメガネの男の人が

 教えてくれた。


「冒険者ギルド?」


 お、なんか聞いたことある。


 あれだよね、色々な依頼を受けてお金貰えるとこだよね?

 何かに使う薬草の採取や、魔物を倒したり、素材とったり。


「そうだが、それよりもお嬢ちゃんはどうしてここに?」

「えっ?」


「魔法使い? いや、でも冒険者には見えないよなぁ?小さすぎて。でもなんでここにいるんだ?」

「うえっ?」

 

「アタシたちを助けてくれてあれだけど、なんかタイミングがいいよね?色々と。もしかして何か知ってる?あなた」

「はわっ?」


 唐突に3人の質問攻めにあう私。


 それはそうだろう。


 小型の隕石みたいなのが落ちてきたら、この場に似つかわしくない幼女がいるんだもん。何かに絡んでいるって思われても仕方ない。


「お嬢ちゃんいったい……」

『うっ』


「小っちゃい嬢ちゃん何で……」

『はわわっ』


「あなたどうして……」

『ううっ…………』


 ど、どうしようっ!


 建物壊して、勝手に街に入ったなんてバレたら……


 どきどき


「「「何でそんなサイズの合わない服を着てるんだ(い)(よ)?」」」


「へ?」


 私は長い袖をヒュイと持ち上げて「これの事?」て目で訴えてみる。


「ああ、なんだってそんな大きいの着てるんだ?」

「あははっ!おさがりだとしても大きすぎだよ!」

「うふふっ、きっと背伸びしたい年ごろなのよ」


「あ、あのぉ!わ、わたしの事を疑ってたんじゃ……」

「うん?疑うって何の事だ」


「だ、だってわたし……」


「お、おいっ!冒険者は誰もいないのかっ?外を見てみろっ!」


 と、扉のない出入り口から街の人らしき人が顔を出し、怒鳴り声をあげる。

 その様子を見る限り、何かよからぬ事があったのだとわかる。


「何だっ?こんな時間に冒険者は残ってないぞ?外がどうした」

「あ、俺っちが見てくるよっ!」


 そう言って、20代の男が外に向かって駆けていく。

 足場が悪いから慎重に。


「ちょ、ちょっとヤバいかもっ!」

「一体今度は何なのぉ?」


 20代の男はすぐさま外に出てこっちを見てそう叫んでくる。


「ロ、ロックバードの大群が街の上空を囲んでるじゃんっ!!」

「な、何でだっ!」

「はぁ?どうしてよっ!」


 私たちはそれを聞いて、慌てて外に出てみる。

 私はこっそりホバーの魔法でついていく。


 そこには――――


 10数匹程の大きな鳥の魔物が街の上空を旋回していた。

 それは何かを探すようにグルグルと回っていた。


 あっ!


『あの鳥さんはっ私をここに落としたあの鳥だっ!』


 もしかして、私に仕返しに来たの?

 仲間を引き連れてまで。


 迷惑したのは私だったのにっ!!


「望むところだよっ!わたしが相手だよっ!!」


 私は「ふんっ」と鼻息荒く空に向かって啖呵をきる。


「は?突然お嬢ちゃん何言ってっ!?」

「へ?何いきなりどうしたんだ?小っちゃい嬢ちゃん」

「え?何であなたが怒ってるのよ?」


 そんな私に3人は不思議そうに声をかけてくる。


「『ふらい』」


 私はそれには答えずに魔法を唱えて空に向かって浮かぶ。


「う、浮いただとっ!」

「マ、マジかっ!小っちゃい嬢ちゃん!?」

「あ、あなたの格好って本物の魔法使いだったの?」


「そ、そうっ!だからわたしに任せてっ!!」


 と、何とか思い通りに浮いて、

 安心して真下の3人にそう声をかける。


「ま、まさかあの大群を退治できるのか?」

「ま、魔法使いだぞっ!しかも上級じゃんっ!」

「す、凄いこの国には魔法使い少ないのに、もしかして」


 あいつらが来たのは多分私のせいだ。


 だから――


『街に被害が出る前にお仕置きしてやるんだからっ!』


 ただそんな逸る心と声とは裏腹に、


「………………」

「………………」

「………………」


 魔物に向かい浮かぶ速度はもの凄く遅いものだった。


 下を見ると、何故かジト目の3人がこっちを見ていた。


『~~~~ううっ』

 だって仕方ないでしょっ!


 急いだら大気圏まで飛びそうなんだもん。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る